この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜
必ず守る
「経理システムの、改ざん?」

スマートフォンを片手に思わず声を上げた礼央に、矢島が近づいてきた。

「朝比奈検事、深月さんからですか?」

ああ、と頷くと「今、矢島に代わる」と凛香に伝えて、スマートフォンを差し出した。
受け取った矢島は、凛香と話し始める。

「ええ……なるほど。確かにその可能性は高いですね。その経理システムは誰でもアクセスできるんですか? ……わかりました。深月さん、今からお話しすることをよく聞いてください」

そう言うと矢島は声のトーンを落として、ゆっくりと凛香に伝える。

「経理システムへのアクセスは、今後しないでください。今、社長の権限でアクセスしているとのことですが、その一回だけなら怪しまれずに済む。だけど何度もアクセスすれば、相手に感づかれます。半年分の不審な収支をフォルダにまとめたとのとでしたね? それをUSBメモリに入れてもらえますか? こちらでも確かめたい。……はい、そうしていただけると助かります。……わかりました。お待ちしております」

通話を終えた矢島は、スマートフォンを礼央に返す。

「これから深月さんが、USBにデータを入れて持ってきてくれるそうです」
「そうか、わざわざ悪いな」
「深月さんの方が恐縮してました。ご迷惑をおかけしますって。そんなの、言われたことないですよね」
「ああ。それでお前、そのデータを解析できるのか? 改ざんの証拠になるように」
「データを見るだけでは無理です。システムをいじらなければ。けど、下手に手を出せば確実にフーメイにバレます」

そうだろうな、と礼央も同意した。

「まずはどんなデータなのかを確認して、どうやって改ざんしているか探ります。今日のところは大したことができなくて、深月さんには申し訳ないですが。タクシーで向かうとのことでしたので、出迎えに行ってきます」
「ああ、頼む」

矢島が出て行った部屋で、礼央はじっと考えを巡らせ始めた。
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