この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜
ついに決行
深夜零時過ぎ。
黒のパンツスーツに身を包んだ凛香は、礼央に連れられて捜査本部が置かれた部屋に入った。

「朝比奈検事」

パソコンから顔を上げて、矢島が近づいてくる。

「よろしくお願いします。現在、全員配置につき、異常はありません」
「了解。道路混雑もない。予定通り一時四十分にここを出発する」
「わかりました。お気をつけて」

続いて矢島は、凛香に笑顔を向けた。

「深月さん、俺たちがしっかりサポートします。大船に乗った気でいてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「では、インカムを装着します。それから持ち物を確認させてください」

耳にイヤホンを着け、胸元にマイクのクリップを留めると、実際にテストして確かめる。

「問題ないですね。社用パソコンとIDカードもお持ちですか?」
「はい、ここに。充電もしてあります」
「完璧です」

おどけたようにドヤ顔をする矢島に、凛香も頬を緩めた。

やがて時間になると、礼央がおもむろに立ち上がる。

「よし、行こう」
「はい」

部屋を出る礼央と凛香を、矢島が親指を立てて見送る。

「Good Luck! 行ってらっしゃい」
「行ってきます」

高ぶる気持ちを抑えつつ、凛香は礼央の背中をしっかりと見据えて歩き始めた。
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