この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜
救出
翌日、黒岩の勾留期限を前に、礼央は朝から警視庁で会議を行っていた。
黒岩を起訴するだけの明確な根拠や証拠がない。
このままでは不起訴になると、焦りを感じながら話し合いを進めていた。

その時、礼央の仕事用のスマートフォンが鳴る。

「……鮎川社長?」

表示された名前を見て、首をひねりながら応答した。

「はい、朝比奈です。……え? 落ち着いてください、鮎川さん。どういうことですか?」

会議室にいた全員が、会話をやめて礼央に注目する。

「朝比奈検事、どうかしましたか?」

スマートフォンを片手にみるみるうちに顔色を変えた礼央に、矢島がささやいた。

「……深月さんが、誘拐された」

ハッと矢島が息を呑む。
会議室の空気も一変した。

「捜査本部設置! 朝比奈検事、詳細を!」

皆は一斉に慌ただしく動き出した。
< 71 / 89 >

この作品をシェア

pagetop