誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –

第1部 嫌いな男との最悪の出会い

経理部で働いていて一番面倒な仕事は、「これ、経費で落ちる?」と聞かれることだ。

そして今日もまた、それだった。

「お願い、篠原さん」

営業部の一条君が、いつものように笑顔でやってくる。

手に持っているのは、契約外の駐車場の領収証。

「……またですか?」

私は軽くため息をつきながら、それを受け取る。

何度も説明してきたはずだ。

「一条さん、契約していない駐車場は経費にできないって、お伝えしましたよね?」

「いや、分かってるんだけどさ。取引先のビルのすぐそばにあって、そこが空いてたからつい……」

と、申し訳なさそうな顔をしながらも、どこか悪びれていない。

「そこを何とか頼みます」

笑ってごまかすその声が、ほんの少しだけ甘い。
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