誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –

第9部 あなたを疑う自分が嫌い

美羽さんとのことで私は隼人さんの事を避けていた。

電話があっても話せないし。

メールも返事をするのが怖くなっていた。

「もう、終わりなのかな。」

あんなに私に本気だと言ってくれた相手を、手放す?

ううん。あんなに心奪われた人を忘れられるの?


そんな中、一台の車が私の横に停まった。

見ると隼人さんだった。

窓が開いて、運転席から彼の低い声が響いた。

「……乗って。」

驚いた私は、立ち尽くしたまま動けない。

「話がしたい。お願いだから、逃げないで。」

その声に、心が震えた。私は、そっとドアを開けて助手席に乗り込んだ。沈黙の車内。エンジンの音だけが響く。

「紗英……俺、何度も電話した。返事がなくても、君のことを信じてた。信じてる。」

私は、唇を噛んだ。

「でも……美羽さんのこと、全部嘘だったの?」
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