誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –

第4部 彼の過去と、涙の痕跡

この想いを絶ち切るはずだったのに——

むしろ私は、また隼人さんの誠実さに触れて、深く惹かれてしまっていた。

そんな矢先だった。

「今日から経理部に配属になる、早瀬 美羽(はやせ みう)さんだ。」

課長が紹介した瞬間、思わず姿勢を正した。

綺麗。スタイルも抜群。目を引くような、華やかなオーラ。

その時、隣にいた上林さんが私の耳元でそっと囁いた。

「彼女よ。桐生部長と付き合ってた人。」

「……え?」

「元モデル。バイトから入って、そのまま社員になったって。まさか経理部に来るなんてね。」

美羽さんは、にこやかに挨拶していた。清楚で、どこか余裕のある微笑み。

——こんな人と、隼人さんは付き合っていたの?

胸の奥が、ざわついた。

彼の過去に、私は勝てるの?
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