ラストランデヴー
2
約1年前、地方支社から私の所属する部署へ異動してきた田島晴樹は、当時まだ課長と呼ばれていた。
私より5歳年上の上司は有能でありながら、誰も寄せつけないような暗い影をその身にまとい、自ら周囲の人間と親しく打ち解けようとはしなかった。
私は容姿端麗な彼に目を見張ったものの、近寄りがたい雰囲気が苦手で、彼の赴任からしばらくはひたすら事務的に接した。
でも不思議なことに、書類の承認を依頼するたび、彼は私の顔をじっと見つめてきた。それから少し慌てて書類に目を通すのだ。
私はその間ずっと怪訝な表情をする羽目になる。女性社員の少ない部署だから私の存在自体が珍しく見えるのだろう。
居心地の悪い課長席前で、いつもそんなことを考えていた。
しかし整った容貌の彼を社内の女性たちが放っておくはずはない。
勤務時間中であるにもかかわらず、ひっきりなしに女性社員たちが私のいる部署を覗きに来る。
用もないのにやって来る彼女たちは、例外なく私を呼び出し、あの手この手で田島課長の情報を引き出そうとした。
私より5歳年上の上司は有能でありながら、誰も寄せつけないような暗い影をその身にまとい、自ら周囲の人間と親しく打ち解けようとはしなかった。
私は容姿端麗な彼に目を見張ったものの、近寄りがたい雰囲気が苦手で、彼の赴任からしばらくはひたすら事務的に接した。
でも不思議なことに、書類の承認を依頼するたび、彼は私の顔をじっと見つめてきた。それから少し慌てて書類に目を通すのだ。
私はその間ずっと怪訝な表情をする羽目になる。女性社員の少ない部署だから私の存在自体が珍しく見えるのだろう。
居心地の悪い課長席前で、いつもそんなことを考えていた。
しかし整った容貌の彼を社内の女性たちが放っておくはずはない。
勤務時間中であるにもかかわらず、ひっきりなしに女性社員たちが私のいる部署を覗きに来る。
用もないのにやって来る彼女たちは、例外なく私を呼び出し、あの手この手で田島課長の情報を引き出そうとした。