恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~
第6章「恋もコードも、直して未来へ」


01|不具合のない人生なんて、ない

 春の風が、オフィスの窓から吹き込んでいた。

 凛と遥人は、再び同じフロアで働いていた。
 以前のような張り詰めた空気は、もうない。

 ふたりが自然体で隣り合っていることは、もはや誰も不思議に思わなかった。

「……このコード、ちょっと冗長かもね」

「言うと思った」

「でも、直さない?」

「お前がレビューしてくれるなら、直してやる」

「ふふ。ずっとレビューしてあげるよ」

 それはまるで、人生そのものを言っているようだった。

 “完璧じゃないからこそ、誰かと一緒に書き直していく”。
 そんなふたりのスタイルは、ゆっくりと、深く根付いていった。



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