恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~
第2章「仕様ですから。恋愛感情などありません」
01|仮想恋人モード、継続中。


 仮想恋人プロジェクト『Virtual Pair』のテスト運用が始まって二週間。

 凛と遥人は、仕事の合間に“恋人っぽい”会話や行動を記録し、日々AIに学習させていた。

 今日のテーマは「自然なスキンシップ」。

「じゃ、手……つないで?」

「……お前、マジか」

「仕様書にあるでしょ?『軽いスキンシップのログが重要』って」

 無言で手を伸ばした遥人と、わずかに躊躇しながらも手を重ねる凛。

 ──ピリッ。

 空気が変わる。

 ほんの一瞬、熱が通る。
 冷たい指先が、静かに重なり合った。

「──はい、記録完了っと」

 ぱっと手を放した凛が、早口でPCを操作する。

「別に、何も感じてませんから。これ、業務ですから」

「知ってる。俺も何も思ってないし」

「そ。なら問題ないわね」

「……ああ」

 ──なのに、ほんの少しだけ、鼓動のテンポが狂った。



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