あなたがいないと、息もできなかった。
エピローグ


 数ヶ月後。

 ふたりは再び、指輪を交わした。

 前回のように「約束にしばられる」ものではなく、
 今度は、「これからを共に選ぶための印」として。

 同じ家に住むことになっても、互いに別々の時間を持つ。
 お互いに無理をさせない。すべてを背負おうとしない。

 奏音は今も働いていて、透真は時折、彼女にランチを届けるのが楽しみになっていた。

 

 春がまた巡り、夜桜の下を歩くたび、ふたりは思い出す。

 あの日、壊れた心。
 あの夜、別れを選んだ痛み。
 そして、もう一度「好き」と言えた、あの瞬間。

 

 ──あなたがいないと、生きていけないと思っていた。

 でも今は違う。

 あなたがいなくても生きていける。

 だけど──生きていく中で、あなたがいてくれたら。

 その世界は、きっと何倍も、優しくて、美しい。

 

 ふたりの春は、ここからはじまる。

 

  ◇ Fin ◇
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