彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない

公の恋人

「琴乃。今週末の予定入れてない?実は外務省も関係するパーティーに仕事で参加するんだけど、できれば君をエスコートして連れて行きたい。協力してくれないか?」

「お仕事の関係って何のパーティーなんですか?大体、私そういうの行ったことないですよ」

「実は海外向けの文化省主催のパーティーなんだ。外務省も協力している。日本の芸能関係者や配給先の企業はもちろんのこと、海外のエージェント関係者も参加する予定なんだ」

 私はピンと来た。

「もしかして……日奈さんも来ますか?」

「国際文化親善大使だから多分招待されていると思う。マスコミが来ている可能性もある」

「それが理由なんですね」

「理由は君を公の恋人にするためだ」

「公の恋人?」

「外務省の同僚にも僕が君をエスコートしていけば自然と恋人だとわかる。日奈も来ていれば以前のことを否定するいい機会になる」

「でも玲さんに恥をかかせてしまいそう。私なんかが、芸能人の方も来るような大きなパーティに行くのは無理だと思うの。そんなパーティーに行くような服とか、そういうのは持ってないわ」

「まあ、その辺りはお手の物だ。お任せ願おうかな、シンデレラ。かぼちゃの馬車を用意して迎えに行くよ」

 私はおかしくて笑ってしまった。

「私をシンデレラにしてくれるの?私でも大丈夫ですか?魔法使いさん」

「何を言ってるんだ。完全予備校の美人講師で有名な蔵原琴乃先生。元から君は業界のシンデレラじゃないか」

 当日、彼はカボチャの馬車ならぬ、タクシーで迎えに来てくれた。

「どこに行くんですか?準備するんですよね?」

「パーティーの下準備が出来るところを予約してある。僕もシンデレラに合わせて変身しないといけないからね」

 彼に連れてこられたセレクトショップでセミフォーマルのドレスを選んだ。
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