彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない

第二章 新しい私

 日本へ戻った私は、空港ですぐにお母さんへ電話をした。ところが電話に出たのはおばさんだった。

「おかえり、琴乃」

「おばさん……お母さんは?」

「今、やっと眠ったところよ。あなたのことを心配してまた過呼吸を起こしたの」

「え?」

「あなたが帰るまでここにいるから、気をつけて帰ってきて」

「はい。すみません、すぐに帰ります」

 私は驚いて家へ戻った。

 お母さんはベッドで眠っていた。顔色も悪く痩せたように見えた。

「おばさん、ただいま戻りました。」

「おかえりなさい。帰って早々大変だけど聞いて頂戴。あなたと連絡が取れないと言って半狂乱して私の所に夜中連絡が来たの。そのあと弦也からも私に連絡があったわ」

 おとといのことだわ。私は青くなった。

「すみません、その日は疲れていて夜すぐに寝てしまったんです。着信に気づいたのが翌朝早朝だったんです」

「あなたもようやく姉さんから離れてゆっくりしていたところだろうし、責めるつもりはないの。でもひとりにするのはちょっと心配で、夜のうちに車で来て安心させたわ。今日の午前中に病院へ行ったんだけど、三日後また病院になったわ。任せて大丈夫?」

「はい」

「じゃあ、私は帰るわね」

「ありがとうございました。あ、おばさん待ってお土産持って帰ってください」

 私はおばさんに紅茶やショッピングバッグなどのお土産を渡した。

「あらまあ、こんなにたくさん、どうもありがとう!」

 おばさんは嬉しそうに顔を輝かせた。ブランド好きなおばさんだから、ハロッズはきっと気に入ると思ったらやっぱりそうだった。
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