白いパンプスのシンデレラ

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「料理の希望をお聞きしても?」

「いつも聞かれて困るんだよ、任せちゃ駄目か?」

おや?と思う、
だいたい細かいリクエストをしたくて、
うちの会社に家政婦を頼む方が多いので、
ほとんど初めてのパターンだ、ちょっと困ったわね。

「好きな食べ物はありますか?」

「だいたい何でも食べるよ」

「それじゃ困ります、好みとかできるだけ細かく
 教えて欲しいんです」

こうゆう人ほど、後で文句を言ってくる事が多いのだ、

「何食べたい?」

「何でもいい」

「じゃあラーメンな」

「ラーメンなんて嫌よ!」

のパターンである。

これは何とか回避したい・・・

「と言われてもねえ、家庭料理だけど、
 小綺麗に盛られていて、そこは外食みたいなのがいいかな」

「そうですか・・・」

「味付けは?」

「良く分からん、任せる」

だんだん自分でも真顔になっている事に気づくが、
これ以外の表情ができそうになかった。

「アレルギーや苦手な食材はありませんか?」

「ないな」

私は心の中で盛大な溜息をつく・・・

これはかなりハズレな依頼者に当たってしまったかも・・・

今までクレームが1つもなく、
人気者家政婦としてやってきたのに、
初めて、『駄目でした』の報告が入る覚悟をする。

とにかく、私の得意料理は和食だ、
定番の物をメインに、しかし出汁だけはきちんと取るとか、
こだわっていこうか・・・

マンションの冷蔵庫を眺めながら、何を作るか考え始めた。
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