白いパンプスのシンデレラ

9

「仕事全部辞めろ」

「はい?」

いきなり言われて、橋本さんは目を見開いている。

あ、またやってしまったと思う。

まあいい。

「これを見ろ」

「契約書?」

そこには、朝食、夕食作り、
ほか洗濯、掃除で月30万と書かれていた。

「これは?」

「見ての通り契約書だ」

自信満々に言う。

「いえ・・・私、掃除は専門ではないですよ?」

「別にかまわない」

「えっと・・・」

「とにかく、ちゃんと寝ろ!」

少し赤くなって、叫ぶように言う俺に、
橋本さんはきょとんとした表情をしていた。

「でも月30万なんて・・・収入のほとんどじゃ・・・」

「ああ、このマンション俺のなんだ、
 給料の他に不動産の収入がある、
 30万はここから出す、
 給料はまるまる残るから心配ない」

そう言い切ると、溜息をついて、
橋本さんが困った顔する。

「もう決まりなんですね」

「決まりだ!」

そう言い切る俺に、

「ありがとうございます」

と困った顔で、でも少し嬉しそうに
契約書にサインしてくれた。
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