月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
エピローグ
王宮の中庭にカーリンの賑やかな声がこだまする。
「こら、シルバ、そこは庭師のお仕事だから、勝手に草をむしらないの!」
シルバは尻尾をふりふりと揺らしながら、「くぅ~ん!」と全力で抗議の声をあげた。
「だけど、どうしてシルバは雑草だけむしって、器用にお花は残すんでしょう?」
「聖獣だから、としか言いようがないわね……」
エミリアは苦笑しながらシルバの頭を撫でた。耳のあたりをくすぐると、気持ちよさそうに目を細める。
シルバは住み慣れたミカエル領に置いてくるつもりでいたが、別れを告げたにもかかわらず、お得意の小型化で馬車に飛び乗り、エミリアたちと一緒に王都へやって来た。
ここへ来て二カ月が過ぎ、怯えて近づかずにいた王宮の人たちも慣れ、今ではすっかりマスコット的存在として親しまれている。
セルジュはレオナール専属の執事として、カーリンはエミリアの侍女として、ミカエル領にいた頃と同じように仕えていた。
主が不在となったミカエルには公爵のひとりが名乗りをあげ、新領主としてあの地を統治している。封印の谷と呼ばれるほど孤立した土地だったが、今では人の往来が増え、この王都とも密に連携を取っている状況だ。
結界が元通りになったため、聖獣のための治療院も必要はなくなった。ミカエル領の森は、再び聖獣たちが心穏やかに過ごせる場所になったのだ。
不意に庭の芝を踏みしめる音が近づいてきた。レオナールだ。
「エミリア。今日は医療協定の件について相談が――」