追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
4
――神殿では(ベルニカ視点)――
私は書類の束を床に投げつけた。
「なんなのよっ! 何で私がこんなことしなければなりませんの!?」
毎日、毎日、お祈りを捧げ、結界の維持や、農地の浄化のために魔法を注ぐ。その他にも、報告書や嘆願書に目を通し、まとめる。
第一聖女になれば、聖女としてはトップ。王族との婚姻の話が来たっておかしくない地位だというのに。
「それなのに、こんな雑用ばっかり押し付けられてっ。他の聖女は役立たずばかり……っ」
私は唇を噛み締める。
しかも、コレットなら、これくらいやっていた。コレットなら、コレットならって……、そんな言葉ばかり聞く。
「冗談じゃないですわ。あんなヤツ、ただの搾りカスじゃないですの!」
その時、ふと閃いた。
(そうですわ! コレットを連れ戻せばいいのではなくて?)
彼女は追放された身。また神殿に戻れると知れば、泣いて喜ぶはず。
「うふふふっ。なーんて、私は優しいんでしょう」
早速、神官長に相談しようと、私は足取り軽く歩き出した。
――――――――
「買うものは、これで終わりです。ありがとうございました」
「……あぁ」
今日の午後は、隣町まで買い物に来ている。ロヴァルト様は荷物持ちをしてくれると、付いてきてくれた。
ロヴァルト様が買い物籠を持ち上げると、ガチャンと音を立てる。
今日買ったものは、ガラスの瓶を十個ほどだ。
「こんなに何に使うんだ?」
ロヴァルト様は籠の中を見て訝しげな顔をする。
「トマトソースを作って、保存しておこうと思ってるんです」
実は、ドデカトマトが他にも何個も見つかり、量が多いのでトマトソースを作って瓶に入れておこうと考えた。
そうすれば、食事の支度が楽になるはず。
「トマトソース……?」
「はい。トマトソースなら、スープにも使えるし、そのままパンに塗っても美味しいですよ!」
「……」
ロヴァルト様は想像をしたのか、大きな喉仏がゴクリと鳴った。
「……いります?」
私が躊躇いがちに尋ねると、
「いただこう」
即答された。
(このやり取り何回目!?)
帰ったら頑張って作らないといけないな、と気合入れていると、道端ですれ違った二人の旅人の会話が耳に入る。
「魔物が出たんだって。見た奴がいたんだ」
「はっ、嘘だろ? どこでだ?」
「北部のモントロ山の麓らしいぞ」
「結界はどうなってんだ? 神殿の聖女が結界を張ってるんだろ?」
「それが……」
二人は遠ざかってしまい、それ以上の会話は聞けなかった。
(どうして魔物が? 私が神殿にいた頃は、たしかに結界を張っていた。……ベルニカはどうしたんだべ?)
私が考え込んで足が止まると、ロヴァルト様が振り返った。
「……コレット殿?」
「あ、すみません。ちょっと気になってしまって……」
慌てて、ロヴァルト様の隣に戻る。
「……神殿は今、ごたついているらしい」
ロヴァルト様がボソッと呟いた。
「ごたついている?」
「……しかし、貴女が気に病むことはない」
それだけ言って、ロヴァルト様は口を閉じる。
私もこれ以上は言葉が見つからず、そのまま黙って帰路についたのだった。
◇ ◇ ◇
最近、私はトマトソース作りに勤しんでいた。
「んー、んま!」
完成したトマトソースを味見すると、濃厚でコクがあり、かなりの出来栄えだ。
このクレイ村の土壌と、私の聖魔法の相性が良かったのか、ドデカトマトがびっくりするくらい美味しかった。
酸味と甘みのバランスが最高で、瑞々しくジューシー、しかもデカい。
八百屋さんに出荷したいところだけど、私の魔力が戻ったことがバレたらまずい。だから、自分たちで食べきれないドデカトマトは、トマトソースにしていた。
テーブルに並んだドデカトマトは、まだ十個ほどある。
それでも今朝、ロヴァルト様が三個食べて、その他に五個持ち帰った。瓶詰めトマトソースも一瓶持っていった。
大事そうに抱えていたし、相当トマトが好きなんだろう。
「……ロヴァルト様かぁ、本当、不思議な人だべ」
私は書類の束を床に投げつけた。
「なんなのよっ! 何で私がこんなことしなければなりませんの!?」
毎日、毎日、お祈りを捧げ、結界の維持や、農地の浄化のために魔法を注ぐ。その他にも、報告書や嘆願書に目を通し、まとめる。
第一聖女になれば、聖女としてはトップ。王族との婚姻の話が来たっておかしくない地位だというのに。
「それなのに、こんな雑用ばっかり押し付けられてっ。他の聖女は役立たずばかり……っ」
私は唇を噛み締める。
しかも、コレットなら、これくらいやっていた。コレットなら、コレットならって……、そんな言葉ばかり聞く。
「冗談じゃないですわ。あんなヤツ、ただの搾りカスじゃないですの!」
その時、ふと閃いた。
(そうですわ! コレットを連れ戻せばいいのではなくて?)
彼女は追放された身。また神殿に戻れると知れば、泣いて喜ぶはず。
「うふふふっ。なーんて、私は優しいんでしょう」
早速、神官長に相談しようと、私は足取り軽く歩き出した。
――――――――
「買うものは、これで終わりです。ありがとうございました」
「……あぁ」
今日の午後は、隣町まで買い物に来ている。ロヴァルト様は荷物持ちをしてくれると、付いてきてくれた。
ロヴァルト様が買い物籠を持ち上げると、ガチャンと音を立てる。
今日買ったものは、ガラスの瓶を十個ほどだ。
「こんなに何に使うんだ?」
ロヴァルト様は籠の中を見て訝しげな顔をする。
「トマトソースを作って、保存しておこうと思ってるんです」
実は、ドデカトマトが他にも何個も見つかり、量が多いのでトマトソースを作って瓶に入れておこうと考えた。
そうすれば、食事の支度が楽になるはず。
「トマトソース……?」
「はい。トマトソースなら、スープにも使えるし、そのままパンに塗っても美味しいですよ!」
「……」
ロヴァルト様は想像をしたのか、大きな喉仏がゴクリと鳴った。
「……いります?」
私が躊躇いがちに尋ねると、
「いただこう」
即答された。
(このやり取り何回目!?)
帰ったら頑張って作らないといけないな、と気合入れていると、道端ですれ違った二人の旅人の会話が耳に入る。
「魔物が出たんだって。見た奴がいたんだ」
「はっ、嘘だろ? どこでだ?」
「北部のモントロ山の麓らしいぞ」
「結界はどうなってんだ? 神殿の聖女が結界を張ってるんだろ?」
「それが……」
二人は遠ざかってしまい、それ以上の会話は聞けなかった。
(どうして魔物が? 私が神殿にいた頃は、たしかに結界を張っていた。……ベルニカはどうしたんだべ?)
私が考え込んで足が止まると、ロヴァルト様が振り返った。
「……コレット殿?」
「あ、すみません。ちょっと気になってしまって……」
慌てて、ロヴァルト様の隣に戻る。
「……神殿は今、ごたついているらしい」
ロヴァルト様がボソッと呟いた。
「ごたついている?」
「……しかし、貴女が気に病むことはない」
それだけ言って、ロヴァルト様は口を閉じる。
私もこれ以上は言葉が見つからず、そのまま黙って帰路についたのだった。
◇ ◇ ◇
最近、私はトマトソース作りに勤しんでいた。
「んー、んま!」
完成したトマトソースを味見すると、濃厚でコクがあり、かなりの出来栄えだ。
このクレイ村の土壌と、私の聖魔法の相性が良かったのか、ドデカトマトがびっくりするくらい美味しかった。
酸味と甘みのバランスが最高で、瑞々しくジューシー、しかもデカい。
八百屋さんに出荷したいところだけど、私の魔力が戻ったことがバレたらまずい。だから、自分たちで食べきれないドデカトマトは、トマトソースにしていた。
テーブルに並んだドデカトマトは、まだ十個ほどある。
それでも今朝、ロヴァルト様が三個食べて、その他に五個持ち帰った。瓶詰めトマトソースも一瓶持っていった。
大事そうに抱えていたし、相当トマトが好きなんだろう。
「……ロヴァルト様かぁ、本当、不思議な人だべ」