追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?

 ――神殿では(ベルニカ視点)――

 私は書類の束を床に投げつけた。

「なんなのよっ! 何で私がこんなことしなければなりませんの!?」

 毎日、毎日、お祈りを捧げ、結界の維持や、農地の浄化のために魔法を注ぐ。その他にも、報告書や嘆願書に目を通し、まとめる。

 第一聖女になれば、聖女としてはトップ。王族との婚姻の話が来たっておかしくない地位だというのに。

「それなのに、こんな雑用ばっかり押し付けられてっ。他の聖女は役立たずばかり……っ」
 私は唇を噛み締める。

 しかも、コレットなら、これくらいやっていた。コレットなら、コレットならって……、そんな言葉ばかり聞く。

「冗談じゃないですわ。あんなヤツ、ただの搾りカスじゃないですの!」

 その時、ふと閃いた。
(そうですわ! コレットを連れ戻せばいいのではなくて?)

 彼女は追放された身。また神殿に戻れると知れば、泣いて喜ぶはず。

「うふふふっ。なーんて、私は優しいんでしょう」
 早速、神官長に相談しようと、私は足取り軽く歩き出した。

 ――――――――


「買うものは、これで終わりです。ありがとうございました」
「……あぁ」

 今日の午後は、隣町まで買い物に来ている。ロヴァルト様は荷物持ちをしてくれると、付いてきてくれた。
 
 ロヴァルト様が買い物籠を持ち上げると、ガチャンと音を立てる。
 今日買ったものは、ガラスの瓶を十個ほどだ。 

「こんなに何に使うんだ?」
 ロヴァルト様は籠の中を見て訝しげな顔をする。

「トマトソースを作って、保存しておこうと思ってるんです」
 実は、ドデカトマトが他にも何個も見つかり、量が多いのでトマトソースを作って瓶に入れておこうと考えた。
 そうすれば、食事の支度が楽になるはず。

「トマトソース……?」
「はい。トマトソースなら、スープにも使えるし、そのままパンに塗っても美味しいですよ!」
「……」
 ロヴァルト様は想像をしたのか、大きな喉仏がゴクリと鳴った。

「……いります?」
 私が躊躇いがちに尋ねると、
「いただこう」
 即答された。

(このやり取り何回目!?)

 帰ったら頑張って作らないといけないな、と気合入れていると、道端ですれ違った二人の旅人の会話が耳に入る。

「魔物が出たんだって。見た奴がいたんだ」
「はっ、嘘だろ? どこでだ?」
「北部のモントロ山の麓らしいぞ」
「結界はどうなってんだ? 神殿の聖女が結界を張ってるんだろ?」
「それが……」

 二人は遠ざかってしまい、それ以上の会話は聞けなかった。

(どうして魔物が? 私が神殿にいた頃は、たしかに結界を張っていた。……ベルニカはどうしたんだべ?)
 私が考え込んで足が止まると、ロヴァルト様が振り返った。

「……コレット殿?」
 
「あ、すみません。ちょっと気になってしまって……」
 慌てて、ロヴァルト様の隣に戻る。

「……神殿は今、ごたついているらしい」
 ロヴァルト様がボソッと呟いた。

「ごたついている?」

「……しかし、貴女が気に病むことはない」

 それだけ言って、ロヴァルト様は口を閉じる。

 私もこれ以上は言葉が見つからず、そのまま黙って帰路についたのだった。



◇ ◇ ◇

 最近、私はトマトソース作りに勤しんでいた。 

「んー、んま!」

 完成したトマトソースを味見すると、濃厚でコクがあり、かなりの出来栄えだ。

 このクレイ村の土壌と、私の聖魔法の相性が良かったのか、ドデカトマトがびっくりするくらい美味しかった。
 酸味と甘みのバランスが最高で、瑞々しくジューシー、しかもデカい。

 八百屋さんに出荷したいところだけど、私の魔力が戻ったことがバレたらまずい。だから、自分たちで食べきれないドデカトマトは、トマトソースにしていた。

 テーブルに並んだドデカトマトは、まだ十個ほどある。

 それでも今朝、ロヴァルト様が三個食べて、その他に五個持ち帰った。瓶詰めトマトソースも一瓶持っていった。
 大事そうに抱えていたし、相当トマトが好きなんだろう。

「……ロヴァルト様かぁ、本当、不思議な人だべ」 
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