馳月基矢さんのレビュー一覧

★★★★★
2019/03/02 21:53
人と、人ならざるものの、魂のはざまで。

妖と触れ合い、人ならざるものの想いを、人の世のものに届ける少女、銀花。 届屋を営む彼女は、天涯孤独な身の上ではあっても明るい。 家族のように見守ってくれる仲間がいて、仕事もあるのだから。 江戸の町に不穏な事件の相次ぐある日、妖を憎む青年、朔が現れる。 朔は腕利きでぶっきらぼうで、そしてどこか危うい。 やかて銀花が知ることとなる自身と朔の生い立ちとさだめに、胸が痛くなる。 憎み合ってしまった悲しい人と妖を、どうすれば救えるのか。 急展開を迎えた終盤は一気読みでした。

妖と触れ合い、人ならざるものの想いを、人の世のものに届ける少女、銀花。
届屋を営む彼女は、天涯孤独な身の上ではあっても明るい。
家族のように見守ってくれる仲間がいて、仕事もあるのだから。

江戸の町に不穏な事件の相次ぐある日、妖を憎む青年、朔が現れる。
朔は腕利きでぶっきらぼうで、そしてどこか危うい。

やかて銀花が知ることとなる自身と朔の生い立ちとさだめに、胸が痛くなる。
憎み合ってしまった悲しい人と妖を、どうすれば救えるのか。
急展開を迎えた終盤は一気読みでした。

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★★★★★
2019/03/01 22:08
雪原の白に映える、空の青、あなたの瞳の青

北海道、紋別の雪原で出会った青い目の人は、犬ゾリを駆る。 優しい口笛を吹きながら、まるで一陣の風のように。 東京で衝撃的な失恋をし、最悪な形で仕事も辞め、北海道へ傷心旅行にやって来た深雪は、お世話になった民宿にそのまま住み込みで働くことを決める。 先輩として深雪に仕事を叩き込むのは、青い目をしたイケメンの啓。 北海道弁バリバリで口が悪く、愛想も悪く……でも優しい啓に、深雪は惹かれていく。 仕事、家族、恋。 悩みながらも頑張る深雪の姿に元気をもらえる作品。 もふもふの犬たちがまたかわいい。 そいとね、地元愛にあふれる小説は、ざまん大好きばい。 九州の離島民けん、北海道、憧るっとです。

北海道、紋別の雪原で出会った青い目の人は、犬ゾリを駆る。
優しい口笛を吹きながら、まるで一陣の風のように。

東京で衝撃的な失恋をし、最悪な形で仕事も辞め、北海道へ傷心旅行にやって来た深雪は、お世話になった民宿にそのまま住み込みで働くことを決める。
先輩として深雪に仕事を叩き込むのは、青い目をしたイケメンの啓。
北海道弁バリバリで口が悪く、愛想も悪く……でも優しい啓に、深雪は惹かれていく。

仕事、家族、恋。
悩みながらも頑張る深雪の姿に元気をもらえる作品。
もふもふの犬たちがまたかわいい。

そいとね、地元愛にあふれる小説は、ざまん大好きばい。
九州の離島民けん、北海道、憧るっとです。

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2019/02/21 19:50
その地味なプレーこそ、一番かっこよかった

銀行の窓口で爽やかに対応してくれた彼は、社会人野球の選手だった。 職人、と呼ばれる左利きの二塁手。試合中もファンの前でもニコリともしないし、淡々としたプレースタイルもひたすら地味。 でも、そんな彼に、柑奈は惹かれた。野球のことなんて何も知らなかったけれど、ルールブックを首っ引きで。彼の職人的なポーカーフェイスの奥にある闘志と情熱を目撃するたび、彼に、野球に、夢中になっていく。 イケメンでも御曹司でもない、目立たなくて堅実な野球選手との恋模様は、地に足の着いたストーリーが心地よく、手に汗握る試合の描写も含め、とても楽しく拝読しました。

銀行の窓口で爽やかに対応してくれた彼は、社会人野球の選手だった。
職人、と呼ばれる左利きの二塁手。試合中もファンの前でもニコリともしないし、淡々としたプレースタイルもひたすら地味。

でも、そんな彼に、柑奈は惹かれた。野球のことなんて何も知らなかったけれど、ルールブックを首っ引きで。彼の職人的なポーカーフェイスの奥にある闘志と情熱を目撃するたび、彼に、野球に、夢中になっていく。

イケメンでも御曹司でもない、目立たなくて堅実な野球選手との恋模様は、地に足の着いたストーリーが心地よく、手に汗握る試合の描写も含め、とても楽しく拝読しました。

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2017/05/03 06:06
いとおしいその色に、輝き続けてほしいから

鮮やかに澄んだ茜色。 それは自分とは違う色だと、茜は思う。 マスクに依存して顔を隠し、本心を隠し、言いたいことを言わず、やりたいことを見付けられない。 優しく瑞々しい青磁色。 それは彼らしい色だと、次第に気付いていく。 初めて会ったはずなのに茜の何もかもを見抜く目をして、嘘つきだ嫌いだと言い切り、茜を傷付けた彼だったけれど。 我が強くて自由な青磁に引っ張り回され、茜の目は、身のまわりに溢れる美しい色と風景を知り始める。 絵を描く青磁の目に映る世界は、なぜこんなにも輝いているのか。 その理由に触れたくて、ただ青磁の側にいたくて、茜の心が大きく動き出す。 美しい情景と絵、怯えて揺れる茜の心、芽生えていく初めての恋を、細やかに描写する筆致が魅力的。 誰もが皆、茜のように、わずらわしいけれども嫌いになれない日常の中で生きている。 茜への共感が、頑張る元気をくれた。

鮮やかに澄んだ茜色。
それは自分とは違う色だと、茜は思う。
マスクに依存して顔を隠し、本心を隠し、言いたいことを言わず、やりたいことを見付けられない。

優しく瑞々しい青磁色。
それは彼らしい色だと、次第に気付いていく。
初めて会ったはずなのに茜の何もかもを見抜く目をして、嘘つきだ嫌いだと言い切り、茜を傷付けた彼だったけれど。

我が強くて自由な青磁に引っ張り回され、茜の目は、身のまわりに溢れる美しい色と風景を知り始める。
絵を描く青磁の目に映る世界は、なぜこんなにも輝いているのか。
その理由に触れたくて、ただ青磁の側にいたくて、茜の心が大きく動き出す。

美しい情景と絵、怯えて揺れる茜の心、芽生えていく初めての恋を、細やかに描写する筆致が魅力的。
誰もが皆、茜のように、わずらわしいけれども嫌いになれない日常の中で生きている。
茜への共感が、頑張る元気をくれた。

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2016/11/20 14:25
優しくて弱い君と、きっと一緒に強くなれる

子どもは親を選べない。 例え親が受け入れがたいほど弱くてずるい人間であっても、子どもは親から離れられない。 経済的にも、精神的にも。 のばらや一吾から見て敵対的に描かれる登場人物も、根っからの悪人ではない。 ただ弱くてずるいだけ。 誰しも少しはそういう汚さを抱えて生きているはずで、その弱さやずるささえいとおしく思える愛や恋もあるだろう。 だからといって、人が人を傷付けていい理由にはならない。 肉体的にも、精神的にも。 のばらと一吾の初恋の物語であり、家庭環境に振り回される子どもたちの社会小説であり、不良少年の群像劇であり、リアルな女子の生態をとらえる学園小説であり、たくさんのエッセンスが詰め込まれた大作です。 テンポのいい文体、のばらの正直さ、生き生きとしたキャラクターのおかけでとても読みやすくて親しみやすく、切なくも力強いラストまでページを繰る手が止まりませんでした。

子どもは親を選べない。
例え親が受け入れがたいほど弱くてずるい人間であっても、子どもは親から離れられない。
経済的にも、精神的にも。

のばらや一吾から見て敵対的に描かれる登場人物も、根っからの悪人ではない。
ただ弱くてずるいだけ。
誰しも少しはそういう汚さを抱えて生きているはずで、その弱さやずるささえいとおしく思える愛や恋もあるだろう。
だからといって、人が人を傷付けていい理由にはならない。
肉体的にも、精神的にも。


のばらと一吾の初恋の物語であり、家庭環境に振り回される子どもたちの社会小説であり、不良少年の群像劇であり、リアルな女子の生態をとらえる学園小説であり、たくさんのエッセンスが詰め込まれた大作です。
テンポのいい文体、のばらの正直さ、生き生きとしたキャラクターのおかけでとても読みやすくて親しみやすく、切なくも力強いラストまでページを繰る手が止まりませんでした。

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2016/11/18 17:04
窓越しに憧れた青空を、今、きみと。

ひたむきに空を飛ぶ彼はとても美しい生き物で、一目で好きになった。 次の瞬間、彼こそが、親友が想いを寄せる人なのだと知った。 親友と一言で済ませられないくらい大切な彼女のために、「私」は、恋する想いを消そうと決めた。 人とコミュニケーションをとるのが苦手で少し臆病な遠子が、絵を描くことを通して、恋のキラキラした気持ちや切なさ、嫉妬、苦しみ、いろんな感情に気付いていきます。 色鮮やかなその文章表現が美しく、胸に迫ります。 遠子が恋する彼方の棒高跳びのシーンもまた、遠子の目に映るままに丁寧に、自由に、輝かしく描写されています。 彼方という少年と棒高跳びという競技の魅力が語られ、ストーリーに圧倒的な説得力を与えているように感じました。 切なくてまっすぐで爽やかな、始まったばかりの恋の物語です。

ひたむきに空を飛ぶ彼はとても美しい生き物で、一目で好きになった。
次の瞬間、彼こそが、親友が想いを寄せる人なのだと知った。
親友と一言で済ませられないくらい大切な彼女のために、「私」は、恋する想いを消そうと決めた。


人とコミュニケーションをとるのが苦手で少し臆病な遠子が、絵を描くことを通して、恋のキラキラした気持ちや切なさ、嫉妬、苦しみ、いろんな感情に気付いていきます。
色鮮やかなその文章表現が美しく、胸に迫ります。

遠子が恋する彼方の棒高跳びのシーンもまた、遠子の目に映るままに丁寧に、自由に、輝かしく描写されています。
彼方という少年と棒高跳びという競技の魅力が語られ、ストーリーに圧倒的な説得力を与えているように感じました。


切なくてまっすぐで爽やかな、始まったばかりの恋の物語です。

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2016/09/23 01:04
年齢差、15歳。ふしぎで優しい同居生活。

無精髭を生やして、ぶっきらぼうで、無愛想。 でも、本当はとても優しくて不器用。 柔らかな染め物をする、32歳のおじさん。 学校が楽しくない祈は、不登校を続けるある日、唐突に、デザイナーの母の元部下だというそのおじさんのもとで生活することになった。 高校生にとって日常であるはずの「アッチ側」と、新鮮で居心地がいい「コッチ側」。 2つの価値観を見比べながら、ときに胸の痛くなる出来事に遭遇しながら、祈は自分と向き合っていく。 学校に行かないのはワルイコトなのか、仕事ばっかりの母への正直な気持ちはどこにあるのか、将来が何も見えない不安をどうすればいいのか。 おじさんは祈の疑問に丁寧に答えてくれるわけではないけれど、祈はおじさんのそばにいることで、自分なりの答えを探していく。 後悔は、必ずある。 だから、有意義な後悔を。 でこぼこな二人が少し切なくて、けれどとても爽やかな物語でした。

無精髭を生やして、ぶっきらぼうで、無愛想。
でも、本当はとても優しくて不器用。
柔らかな染め物をする、32歳のおじさん。

学校が楽しくない祈は、不登校を続けるある日、唐突に、デザイナーの母の元部下だというそのおじさんのもとで生活することになった。
高校生にとって日常であるはずの「アッチ側」と、新鮮で居心地がいい「コッチ側」。
2つの価値観を見比べながら、ときに胸の痛くなる出来事に遭遇しながら、祈は自分と向き合っていく。

学校に行かないのはワルイコトなのか、仕事ばっかりの母への正直な気持ちはどこにあるのか、将来が何も見えない不安をどうすればいいのか。
おじさんは祈の疑問に丁寧に答えてくれるわけではないけれど、祈はおじさんのそばにいることで、自分なりの答えを探していく。

後悔は、必ずある。
だから、有意義な後悔を。

でこぼこな二人が少し切なくて、けれどとても爽やかな物語でした。

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2016/09/14 08:01
飛べ。限界を知って、可能性を信じて。

瑞穂の目には、誰もが「穴顔」にしか映らない。 顔があるのは、新しい家族だけ。 恐怖の対象、母親代わりの人。 冷たく苛立った、腹違いの兄。 単身赴任中の無責任な父。 瑞穂の世界そのものだった母はもういない。 私は母に裏切られたの? 誰の言葉を信じればいいの? 私は存在していていいの? 学校で「穴顔」じゃない人に出会った。 溌剌とした美少女のマリ。 自由自在に飛び回る遊馬。 穴顔とそうじゃない人の違いは何? ときどき訪れる鮮明な白昼夢の正体は? 私に手を差し伸べる彼らは何を思っている? 傷付け合ってしまった不器用な家族は、やがて互いを見つめ合う。 目に見えるもの、見えないもの。 大切な感情は、真実は、どこにあるのか。 少しずつ顔を上げていく瑞穂と、彼女を救いたい皆の思いがようやく噛み合う瞬間は、「温かい、優しい」だけでは言い表せません。 瑞穂が見届ける「さよなら」が胸に迫りました。

瑞穂の目には、誰もが「穴顔」にしか映らない。
顔があるのは、新しい家族だけ。
恐怖の対象、母親代わりの人。
冷たく苛立った、腹違いの兄。
単身赴任中の無責任な父。
瑞穂の世界そのものだった母はもういない。

私は母に裏切られたの?
誰の言葉を信じればいいの?
私は存在していていいの?

学校で「穴顔」じゃない人に出会った。
溌剌とした美少女のマリ。
自由自在に飛び回る遊馬。

穴顔とそうじゃない人の違いは何?
ときどき訪れる鮮明な白昼夢の正体は?
私に手を差し伸べる彼らは何を思っている?

傷付け合ってしまった不器用な家族は、やがて互いを見つめ合う。
目に見えるもの、見えないもの。
大切な感情は、真実は、どこにあるのか。

少しずつ顔を上げていく瑞穂と、彼女を救いたい皆の思いがようやく噛み合う瞬間は、「温かい、優しい」だけでは言い表せません。
瑞穂が見届ける「さよなら」が胸に迫りました。

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2016/09/13 02:43
キミが望むのなら、ボクは命を懸けてでも、

人間そっくりの高性能ヒューマノイド、ルイ。 ある目的のために彼を誕生させたのは、エミリの父だった。 感情を忘れ去ったエミリとは裏腹に、ロボットのはずのルイはよく笑うし、少し泣き虫で、嫉妬することも戸惑うこともあって、たまに「良い性格」になる。 いつでも直球のリカコ、物静かな隠れイケメンのアカリ、神様みたいな笑顔のナル、そしてエミリとルイ。 アンバランスに見える5人は、いつしか、かけがえのない仲間となり、支え合って、それぞれが抱える心の闇に向き合っていく。 ルイが獲得した心や命、体を持つ前から抱き続けていた愛と使命。 ルイが流す涙の意味を本当に理解したとき、エミリは、消せない過去を背負いながらも前に進んでいける。 心と命、愛の形を問い掛ける物語です。

人間そっくりの高性能ヒューマノイド、ルイ。
ある目的のために彼を誕生させたのは、エミリの父だった。
感情を忘れ去ったエミリとは裏腹に、ロボットのはずのルイはよく笑うし、少し泣き虫で、嫉妬することも戸惑うこともあって、たまに「良い性格」になる。

いつでも直球のリカコ、物静かな隠れイケメンのアカリ、神様みたいな笑顔のナル、そしてエミリとルイ。
アンバランスに見える5人は、いつしか、かけがえのない仲間となり、支え合って、それぞれが抱える心の闇に向き合っていく。

ルイが獲得した心や命、体を持つ前から抱き続けていた愛と使命。
ルイが流す涙の意味を本当に理解したとき、エミリは、消せない過去を背負いながらも前に進んでいける。
心と命、愛の形を問い掛ける物語です。

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2016/09/12 13:52
あの日、来なかった君を、今も思い出すよ

大学一年生のころ、「僕」は渡に出会った。 どこか斜に構えて不機嫌そうで、影を背負ったような、独特な雰囲気の渡。 純文学をきっかけに次第に仲良くなった「僕」と渡は、ありふれた友達同士として、ひと夏をともに遊ぶ。 海へ行こう。 朝からママチャリを漕いで。 約束を交わす二人に訪れる悲劇に、胸を締め付けられました。 渡の背負った罪悪感と因縁、祈り、愛、悲しみは、彼自身の口からは決して饒舌には語られません。 本質的には明るい渡の諦めきった表情は、だからこそ、なおのこと強く印象に残ります。 一人の女性を愛した二人の青年の、ともに過ごした短い青春の記録です。

大学一年生のころ、「僕」は渡に出会った。
どこか斜に構えて不機嫌そうで、影を背負ったような、独特な雰囲気の渡。
純文学をきっかけに次第に仲良くなった「僕」と渡は、ありふれた友達同士として、ひと夏をともに遊ぶ。

海へ行こう。
朝からママチャリを漕いで。

約束を交わす二人に訪れる悲劇に、胸を締め付けられました。
渡の背負った罪悪感と因縁、祈り、愛、悲しみは、彼自身の口からは決して饒舌には語られません。
本質的には明るい渡の諦めきった表情は、だからこそ、なおのこと強く印象に残ります。

一人の女性を愛した二人の青年の、ともに過ごした短い青春の記録です。

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2016/09/11 10:58
主を愛した黒猫の、すこしふしぎな平安物語

紅朧と書いて、くろう。 それが、赤い唐紐を首に付けた美しい黒猫の名前。 紅朧は、主の仁央様のことが大好きだ。 仁央様も紅朧をとてもかわいがってくださる。 その雨の日、仁央様の愛しの君、綾様も紅朧をかわいがってくださった。 屋敷にいないときの仁央様のお姿を見られて嬉しかった帰り道、紅朧の身に悲惨な運命が訪れて――。 柔らかで丁寧な言葉で綴られる、平安時代の情愛の物語です。 紅朧は愛される、けれども時は移ろっていきます。 その無常の世界観に惹かれました。

紅朧と書いて、くろう。
それが、赤い唐紐を首に付けた美しい黒猫の名前。

紅朧は、主の仁央様のことが大好きだ。
仁央様も紅朧をとてもかわいがってくださる。

その雨の日、仁央様の愛しの君、綾様も紅朧をかわいがってくださった。
屋敷にいないときの仁央様のお姿を見られて嬉しかった帰り道、紅朧の身に悲惨な運命が訪れて――。


柔らかで丁寧な言葉で綴られる、平安時代の情愛の物語です。
紅朧は愛される、けれども時は移ろっていきます。
その無常の世界観に惹かれました。

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2016/09/11 00:37
廃墟の教会に、切なさの調べが重なって

何かとても大切なことを忘れている。 高校生になって充実し始めた日々の中で、美冬は気付いた。 知っているはずのことを思い出せない。 知らないはずのものを大事にしている。 読み進めるごとに、美冬の消えた記憶、雪夜の背負った十字架の謎が明かされていきます。 クラスメイトの嵐や梨花の明るさと強さに背中を押されながら、悲しみに向き合う美冬の心の成長が、胸に残りました。

何かとても大切なことを忘れている。

高校生になって充実し始めた日々の中で、美冬は気付いた。
知っているはずのことを思い出せない。
知らないはずのものを大事にしている。


読み進めるごとに、美冬の消えた記憶、雪夜の背負った十字架の謎が明かされていきます。
クラスメイトの嵐や梨花の明るさと強さに背中を押されながら、悲しみに向き合う美冬の心の成長が、胸に残りました。

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2016/05/29 15:12
ネタバレ
雛子のくせに可愛くなりやがって

29歳でヴァージン。
未知のソレへの不安と焦りがある一方で、その一歩を踏み出せなくなるトラウマが胸に刺さっている。

ヒロインの雛子は赤面症で、ちょっと古風で、気弱なところがあって、まじめで。
どこかほっとけない雰囲気の彼女を、先輩である喜多嶋はずっと見つめていた。

処女脱却のためのレッスンと称して、雛子を呼び出す喜多嶋。
唐竹を割ったような気性に自信満々の言動は、時に辛辣に見え、時に無邪気に見える。
要は率直で、実はわかりやすくて、本当は誰よりも雛子のことを知ろうとしてくれていて。

蜂蜜入りのホットミルク。
膝に掛けてくれる上着。
小学生みたいでもあり、大人の包容力も持っている喜多嶋の素顔がわかってくるにつれて、ドキドキしつつも、ほんわかと温かな気持ちになれる。
そんな優しいラブストーリーでした。

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★★★★★
2016/04/09 12:36
一癖あるけど大好きな、役者の彼と

個性豊かな役者たちの、戸惑いあり、切なさあり、笑いありの恋愛模様。 大好きな友達と大好きないとこに、正直になってほしくて。 「逃げ惑う恋心」 つかみどころがない彼の、本番直前の爆弾発言。 「その恋心は罰金刑」 大きな体の彼は、そして、綺麗な所作でスマホを仕舞った。 「その影は恋を知る」 おまえら付き合ってないとか、ありえねえだろ!? 「そんなふたりの恋の距離」 座長代わりの最年長の俺と彼女が初めて会話したときに。 「恋の始まりは桃色に染まる」 男友達と夏祭りに行った彼女に、不甲斐なさを自覚して。 「愛情に宣戦布告」 彼女の優しさを引き出せるのは誰なのかを知ったから。 「その恋は僕を成長させる」 彼にとっては些細なことでも、私はいちいち悩んでしまう。 「逃げ惑う乙女心」 思わずニンマリしつつ、胸が温かくなる短編集です。

個性豊かな役者たちの、戸惑いあり、切なさあり、笑いありの恋愛模様。


大好きな友達と大好きないとこに、正直になってほしくて。
「逃げ惑う恋心」

つかみどころがない彼の、本番直前の爆弾発言。
「その恋心は罰金刑」

大きな体の彼は、そして、綺麗な所作でスマホを仕舞った。
「その影は恋を知る」

おまえら付き合ってないとか、ありえねえだろ!?
「そんなふたりの恋の距離」

座長代わりの最年長の俺と彼女が初めて会話したときに。
「恋の始まりは桃色に染まる」

男友達と夏祭りに行った彼女に、不甲斐なさを自覚して。
「愛情に宣戦布告」

彼女の優しさを引き出せるのは誰なのかを知ったから。
「その恋は僕を成長させる」

彼にとっては些細なことでも、私はいちいち悩んでしまう。
「逃げ惑う乙女心」


思わずニンマリしつつ、胸が温かくなる短編集です。

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★★★★★
2016/04/09 09:15
君につき続けた嘘の痛み

両想いだと感じていた。 「君」が志望校を「私」と同じにしてくれて、嬉しかった。 一緒に勉強を頑張った。 「一緒に北高に行こう」 何度も繰り返した、その言葉。 それは、本当は「私」にとって、嘘だった。 一生懸命に受験勉強をする「君」の邪魔をしないために嘘をついてしまう。 その罪悪感と後悔、切なさに胸が締め付けられます。 自分の弱さと情けなさに傷付いた思い出は、今は、胸を抉るようなマイナスだとしても。 将来、絶対値で括ることができたときには、きっと、とても大きな価値を持つのだと信じます。

両想いだと感じていた。
「君」が志望校を「私」と同じにしてくれて、嬉しかった。
一緒に勉強を頑張った。

「一緒に北高に行こう」

何度も繰り返した、その言葉。
それは、本当は「私」にとって、嘘だった。


一生懸命に受験勉強をする「君」の邪魔をしないために嘘をついてしまう。
その罪悪感と後悔、切なさに胸が締め付けられます。

自分の弱さと情けなさに傷付いた思い出は、今は、胸を抉るようなマイナスだとしても。
将来、絶対値で括ることができたときには、きっと、とても大きな価値を持つのだと信じます。

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★★★★★
2015/12/17 13:03
暗闇に差す一条の光にすがり続けた心は

レイラの心は揺さぶられる。 悪魔のように美しく冷酷なロックシンガー、リヒトに囚われ続けた7年間。 子犬のように懐いた年下のルイが、抑えきれない想いのままに抱きしめてくれたぬくもり。 リヒトの強烈なまばゆさの前にひれ伏すことが許されるなら、幸せな恋などいらないと思っていた。 ルイのぬくもりこそ残酷で、孤独の冷たさを知らしめられたレイラは、もう一人でいられないと気付いてしまう。 愛する人に、愛されたい。 だんだんと自分の望みに気付いていくレイラの行く手に、分かれ道がある。 レイラは、どちらを選ぶのか。 切なく、寂しく、限りなくいとおしい気持ちになれるラブストーリーです。

レイラの心は揺さぶられる。

悪魔のように美しく冷酷なロックシンガー、リヒトに囚われ続けた7年間。
子犬のように懐いた年下のルイが、抑えきれない想いのままに抱きしめてくれたぬくもり。

リヒトの強烈なまばゆさの前にひれ伏すことが許されるなら、幸せな恋などいらないと思っていた。
ルイのぬくもりこそ残酷で、孤独の冷たさを知らしめられたレイラは、もう一人でいられないと気付いてしまう。

愛する人に、愛されたい。
だんだんと自分の望みに気付いていくレイラの行く手に、分かれ道がある。
レイラは、どちらを選ぶのか。


切なく、寂しく、限りなくいとおしい気持ちになれるラブストーリーです。

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★★★★★
2015/11/05 01:42
手強い恋敵!?

三角関係? というか、二股? しかも、同棲カップルの愛の巣に住み着いた“無口な美女”!? 主人公のミカちゃん、なんてけしからん男に尽くしてるんだろう。 憤りつつ読み進めるうちに、じわじわと解けてくるトライアングルの謎。 ほっこりします。 ニマニマしながらお読みください。

三角関係?
というか、二股?
しかも、同棲カップルの愛の巣に住み着いた“無口な美女”!?

主人公のミカちゃん、なんてけしからん男に尽くしてるんだろう。
憤りつつ読み進めるうちに、じわじわと解けてくるトライアングルの謎。

ほっこりします。
ニマニマしながらお読みください。

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★★★★★
2015/10/22 15:16
女の子に恋する彼女と、男の子に恋する彼。

親友である女の子に恋をした、彼女。 誰よりもそばにいたから、いちばん近くで彼女を見ていた。 誰もが憧れる男の子に恋をした、彼。 付かず離れずの距離は、近付いて突き放されるのが怖いから。 転校していく親友は、彼女に何と答えるだろう? 憧れのあいつが好きな人は、一体誰なんだろう? 男女交際禁止の学校。 交際するのは「男女」だという、常識的で窮屈な決め付け。 彼女と彼はお互いの秘密を共有できる友達同士。 でも、どうして「秘密」にしなきゃいけない? 恋心をいだくのは、あまりにも自然なことで、その向かう対象を自分で制御したりなんてできない。 否定されなければならないほど、彼女の、彼の、恋は間違っているのですか? 気持ち悪くて醜いものですか? 叶わない恋をしてしまうのは、彼女だけ、彼だけではないはず。 彼女の、彼の、切なさの形を、どうぞリアルに読み解いてください。

親友である女の子に恋をした、彼女。
誰よりもそばにいたから、いちばん近くで彼女を見ていた。

誰もが憧れる男の子に恋をした、彼。
付かず離れずの距離は、近付いて突き放されるのが怖いから。


転校していく親友は、彼女に何と答えるだろう?

憧れのあいつが好きな人は、一体誰なんだろう?


男女交際禁止の学校。
交際するのは「男女」だという、常識的で窮屈な決め付け。

彼女と彼はお互いの秘密を共有できる友達同士。
でも、どうして「秘密」にしなきゃいけない?


恋心をいだくのは、あまりにも自然なことで、その向かう対象を自分で制御したりなんてできない。

否定されなければならないほど、彼女の、彼の、恋は間違っているのですか?

気持ち悪くて醜いものですか?


叶わない恋をしてしまうのは、彼女だけ、彼だけではないはず。
彼女の、彼の、切なさの形を、どうぞリアルに読み解いてください。

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★★★★★
2015/10/20 23:02
ネタバレ
笑顔でい続けたいのなら

笑った顔で誤魔化せば
全てが丸く収まると
弱い心が望むとき
笑顔の彼が現れる

ピピンという名の少年が
差し出す魔法の仮面には
笑顔の呪いが秘められて
外したくても外せない


心優しい村娘カナは、誰にも涙を見せたくなかった。
優秀な双子の兄のラフは、人に好かれる弟を羨んでいた。
人好きのする弟のニコは、完璧な兄と比較されたくなかった。

それぞれの心に巣食った醜い思いが、魔法の仮面を呼び寄せる。
どこかゾクリとするような、現代の寓話。

もしも本当に魔法の仮面が存在するなら、あなたはそれを手にしてみたいと望みますか?

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★★★★★
2015/10/12 10:42
彼の選んだ生き様は、強くて、儚い

目立たないように、ひっそりと、人間社会の影に溶け込んで生きていけたらいい。 そう願っていたヴァンパイアの血を引く少年、エルザ。 そんなエルザの前に、まるで嵐のように現れたのが、女応援団長の和真と副団長の荘司。 和真は凛々しく美しく、何事にもまっすぐな目を向ける。 お調子者の荘司は、その実、誰よりも思いやり深い兄貴肌。 二人の勢いに引っ張られ、戸惑ったり落ち込んだりしながら、エルザは自分の力で前に進み始める。 自分の心に正直に向き合い、楽しそうに笑うようになるエルザが微笑ましかったです。 だからこそ、ヴァンパイアの呪いに蝕まれていく姿、弱った体でヴァンパイアの狂気的象徴と戦う姿は、やるせなく、残酷でした。 恋に落ち、愛を知り、優しさに生きた一人の少年。 彼の純粋な生き様を描く、ちっぽけで美しい物語です。

目立たないように、ひっそりと、人間社会の影に溶け込んで生きていけたらいい。
そう願っていたヴァンパイアの血を引く少年、エルザ。

そんなエルザの前に、まるで嵐のように現れたのが、女応援団長の和真と副団長の荘司。
和真は凛々しく美しく、何事にもまっすぐな目を向ける。
お調子者の荘司は、その実、誰よりも思いやり深い兄貴肌。
二人の勢いに引っ張られ、戸惑ったり落ち込んだりしながら、エルザは自分の力で前に進み始める。


自分の心に正直に向き合い、楽しそうに笑うようになるエルザが微笑ましかったです。
だからこそ、ヴァンパイアの呪いに蝕まれていく姿、弱った体でヴァンパイアの狂気的象徴と戦う姿は、やるせなく、残酷でした。

恋に落ち、愛を知り、優しさに生きた一人の少年。
彼の純粋な生き様を描く、ちっぽけで美しい物語です。

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