【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
変わったものと変わらないもの
動き出したのか、止まったままなのか――そんな曖昧な時間が始まった。

あんなことがあっても、仕事は待ってはくれないし、私情を挟んで佐伯部長を避け続けるわけにもいかない。

「あー、終わらない……」

必死に仕事を進めているうちに、時間はあっという間に過ぎ、時計の針はもうすぐ22時を指そうとしていた。

友里や満ちゃんも「手伝うよ」と声をかけてくれたが、この案件だけはどうしても自分で仕上げたかった。

佐伯部長が来てから、初めて一緒に取り組む案件。それが、オーストラリアで爆発的に売れているフルーツウォーターの独占販売権の交渉だ。

海外の有名女優たちからも大絶賛され、デトックス効果や美肌効果があると言われているこの商品は、日本でも必ずヒットすると見込まれている。

コストや広告戦略など、思いつく限りの提案を、どうしても今日中にまとめ上げたかった。

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