砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
第三章 母

療養生活

カインは病気療養を理由として、国境近くの森の奥の古城に滞在することになった。
身の回りの世話はモレーがしてくれる。
表立ったオルディン家の仕事はモリセットが代行したが、指示はカインが出している。




この日も温かい春の日差しの差し込む窓辺で、カインは大量の資料に目を通していた。
今年の秋冬は天候に恵まれず、農作物の収穫量が減っていた。対策を練らねば、小作人の生活にも影響が出てしまう。

「カルヴィン様、少し休憩しませんか」
「そうだな」

モレーが淹れた特製のお茶を飲みながら、カインは窓の外の緑に目をやった。

遠隔地で仕事をこなすのは大変だが、城下と違いここにはカインを不安にさせるものはなかった。訪ねてくる人も限られている。

「春になってこのところは天候が安定している。このまましばらく続くといいが…」
「そうですねぇ。いっそ、ちょっとくらい天候が悪くても平気な作物があればいいですねぇ」
「それもそうだな…時間だけはあるから少し勉強してみるか」

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