砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

積み木の城


産後の体が落ち着くとカインは公爵家にアルスを連れて戻ってきた。
空白の期間などまるでなかったように、変わらずアベルの影となり仕事を補佐する。

男としては華奢な体も、病のせいだと周囲に思われて好都合だった。

一方、生まれ落ちたその時からオルディン家を背負う運命の子アルス。

公には、母は田舎貴族の娘で華やかな世界を嫌い、カインとは別居していることになっていた。
アルスもそのように教えられ、母の顔を知らずに育つ。
母に会いたいと言ったこともない。
母の存在など必要ではないほど、アベルがとにかく可愛がってくれたからだ。
カインとアベルに惜しみない愛情を注がれながら、アルスはすくすくと成長していった。



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