砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

月光のデュス

それから間もなくして、アベルのブリュオー王国行きが正式に発表された。

王子の生誕に王弟の婚約と、王国はお祝いムード一色だ。

リチャードと名付けられた王子は、決して生育良好な状態ではない。だが、その事実は国民には伏せられていた。

リチャード王子のお披露目をうやむやにするため、アベルの婚約を大々的に祝う流れとなる。
出立前には舞踏会が盛大に行われることになった。


そんな中、カインは日々淡々と業務をこなし、アベルとはなるべく私的な時間を作らないようにしていた。

アベルが彼に相応しい女性と家庭を持つことは、覚悟していたはずだった。だが、いざとなると虚無感と嫉妬心がドロドロと心を澱ませていく。
自分はいつしか、体だけでなく心まで女性になっていたのだと思い知る。制御できなくなりそうで怖かった。
< 140 / 246 >

この作品をシェア

pagetop