砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

友よ、再び



ーーこれが、小競り合いレベルだって?

目の前に広がる焼け野原と化した農地にアベルは絶句した。
民家も焼け焦げて破壊され見るも無惨な状況だ。
アベルが先駆けとして派遣した兵士三名のうち二名が亡くなっていた。どさくさに紛れて山賊も出没していて、襲われたのだという。
状況は最悪だった。

「誰か、誰かいないか?」
「アルベルト様、こちらの民家はカラです」
「こちらもです!人っ子一人いません」

人の気配が感じられない。
一体どうなっているんだ。まさか……皆殺し?

最悪の状況を想定しながら捜索していると、村の奥の森の木陰に子供の姿を見つけた。
頭から外套をすっぽりとかぶり、怯えたように木の陰から出てこない。

アベルは部下の歩兵に子供へ声をかけるよう指示した。

「村の子かい?」

歩兵が声をかけると、子供は不思議そうに首をかしげた。

「あぁ、そうか、言葉が通じないか。
えっと、フォトキナ語だと…」
「ブリュオーの兵だね。何しに来たの?」

少年は流暢なブリュオー語で話しかけてきた。

「お、言葉わかるのか。よかった。
俺達は国王陛下の命でこの戦を終わらせにきた。食料や薬もたくさん持ってきてる。
他の村人は今どこにいる?」

優しく声をかけたが少年は木陰に身を寄せたまま、警戒を解こうとはしない。

「見せて」
「え?」
「本当に僕たちを助けに来たのか、食料や薬なんて本当にあるの?見せてよ」
「疑り深いやつだな。騎馬隊の後ろを見てみろ」

歩兵が指を指した騎馬隊の後ろには、確かに物資が乗っていると思われる馬車があった。

その次の瞬間だった。

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