砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
第ニ章 秘密
カルヴィン・オルディン公爵
「カルヴィン様、こちらの書類も目を通してサインをお願いします」
執事のモリセットがカインの机にドサッと書類の束を積む。
「いけません。カルヴィン様、少し休憩なさって下さいまし。私、カルヴィン様のお好きなジンジャークッキーを焼いてまいりました。
焼きたてを是非召し上がって下さいませ」
モリセットの妻で乳母のモレーがその手にティーセットを持ってやって来た。
父ニックスが亡くなり、公爵家を継いでからというもの、カインは屋敷を出ることがなくなった。
山のような雑務の全てに目を通し、どうしても必要な視察にはモリセットを使い、カインは机の上だけで処理をしていく。
カインが貴族議員会議に出席しなくてもなんとかこなしていけるのは、モリセットを手足として使い、常にアンテナを張り、無駄の無い意見のみを発信しているからだ。
だが、いつまでもこのままではいられないことは、カイン自身が一番わかっている。
それでも、父という後ろ盾をなくして人前に出る勇気が持てなかった。
そんな生活が三ヶ月続いていた。いつしか季節も変わろうとしている。
「ありがとう、モレー。キリがいいところまでやってから食べるよ。
ところで。アンジェ姉様の子どもはどうだったんだい、モリセット。悪い知らせでも、知らせてくれないか」
執事のモリセットがカインの机にドサッと書類の束を積む。
「いけません。カルヴィン様、少し休憩なさって下さいまし。私、カルヴィン様のお好きなジンジャークッキーを焼いてまいりました。
焼きたてを是非召し上がって下さいませ」
モリセットの妻で乳母のモレーがその手にティーセットを持ってやって来た。
父ニックスが亡くなり、公爵家を継いでからというもの、カインは屋敷を出ることがなくなった。
山のような雑務の全てに目を通し、どうしても必要な視察にはモリセットを使い、カインは机の上だけで処理をしていく。
カインが貴族議員会議に出席しなくてもなんとかこなしていけるのは、モリセットを手足として使い、常にアンテナを張り、無駄の無い意見のみを発信しているからだ。
だが、いつまでもこのままではいられないことは、カイン自身が一番わかっている。
それでも、父という後ろ盾をなくして人前に出る勇気が持てなかった。
そんな生活が三ヶ月続いていた。いつしか季節も変わろうとしている。
「ありがとう、モレー。キリがいいところまでやってから食べるよ。
ところで。アンジェ姉様の子どもはどうだったんだい、モリセット。悪い知らせでも、知らせてくれないか」