砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命

男と女

「あぁ、カルヴィン様、心配していたんですよ、ひどい雨で。アルベルト王子様も大丈夫でございましたか?」

屋敷へ戻ると、モレーが飛び出して来た。

「大丈夫だよ、モレー。アベルも無事で城へお帰りになられた」

カインのいつもと変わらない様子にモレーはホッと胸をなで下ろす。


「いかがでしたか、久しぶりの乗馬は?いい気分転換になられたのでは?」


カインの自室ではモリセットが待っていた。その手には暖かい飲み物を持っている。差し出されたカップを口に運び、カインはソファに深々と腰掛けると、大きなため息を一つついた。

「モリセット、モレー。心して聞いてくれ。
……アベルに、知られた」

何のことかすぐにピンときたモレーはヒィッと息を飲み、モリセットも目を大きく見開いた。
だが、カインは、淡々とした口調で続ける。

「雨のせい…いや、油断があったんだ。すまない。
だが、アベル口外しないと誓ってくれた。私はその言葉を信じようと思う」

「ほ…本当に気づかれてしまったのですか?勘違いでは、済まなかったのでしょうか」

モリセットは、動揺して声を震わせている。

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