突然、あなたが契約彼氏になりました
第二章
徳光さんの男子校の話以外のことを話すと彼女は満足そうに頷いた。
「小塚君って意外と行動派なのね、田中の前でイチャイチャしなさいよ。あっ、そうだ! あたしがみんなに言いふらしてあげる。任せてね。田中なんか、蹴散らしてやりなさい。あいつは悪い男よ。あたしには分かるわ」
「なんで分かるんですか」
「女の勘ってやつよ。あの子、いつもヘラヘラと笑ってるけど、その裏には何かあるのよ。菜々に、あんな変な薬を飲ませたりして許せないわ」
徳光さんが菜々をおんぶして自宅のマンションに連れ帰った訳なのだが、目覚めた時、心からホッしたような顔をしていたのだ。この人は優しい。
生理痛で苦しんでいる時は、薬局まで行って鎮痛剤を買ってきてくれたりする。
『店員が生理痛にはこれがいいって言うのよ』
今思うと、彼女は生理というものがどういうものなのか知らないというのに、あんなに心配してくれたのだ。胸がジンと痛くなる。いつも、親身になってくれていい人である。
(だけど、昔、男だった真実は、あたしには打ち明けてはくれないんだね……。それなら、あたしも何も知らないフリをするしかないよね)
そう思い、今まで通りに女子同士として接していこうと思っていると、その日の午後、徳光さんは、給湯室でみんなに言いふらしたのである。
『ねぇねぇ、聞いてよ。菜々ね、小塚君と付き合い始めたわよ』
そんなニュースに社内は一気にざわめいた。何しろ、小塚は田中の次に注目されている若手のイケメンである。
『なんで土屋さんなのよ』
『土屋さんの未亡人のテクニックにほだされたのかもしれないよ』
給湯室やトイレでコソコソと噂されて生きた心地はしなかった。菜々が付き合ったのは大河一人。夜のテクニックなどある訳がない。何にせよ、これで田中も諦めてくれるだろう。
そう想っていたのだが甘かった。翌日、菜々が帰ろうとビルのホールに向かったところで田中に捕まってしまった。話があると言うので、仕方なく田中と二人切りになれそうな場所へと向かう。まさか、社員食堂で薬を盛ったりはしないだろう。
「田中さん、何でしょう」
「妙な噂を聞いたよ。菜々ちゃんが小塚と付き合っているって女子が騒いでいたけど、本当なの?」
「本当ですよ。お互い、いい歳ですし結婚を前提として付き合っています。小塚さんに告白されて、とても嬉しかったです」
そう言うと、明らかに田中は顔色を変えた。そんな馬鹿なと言いたげな表情で呟いている。
「駄目だよ。あいつは菜々ちゃんに相応しくないよ。オレの方が菜々ちゃんを幸せに出来ると思うんだ。ハッキリ言うよ。オレは菜々ちゃんが好きなんだ」
「あたしのどこが好きなんですか?」
「菜々ちゃんは可愛いよ。こんな可愛い子は見た事がない。菜々ちゃんの可愛い顔を毎日見たいんだよ」
「小塚君って意外と行動派なのね、田中の前でイチャイチャしなさいよ。あっ、そうだ! あたしがみんなに言いふらしてあげる。任せてね。田中なんか、蹴散らしてやりなさい。あいつは悪い男よ。あたしには分かるわ」
「なんで分かるんですか」
「女の勘ってやつよ。あの子、いつもヘラヘラと笑ってるけど、その裏には何かあるのよ。菜々に、あんな変な薬を飲ませたりして許せないわ」
徳光さんが菜々をおんぶして自宅のマンションに連れ帰った訳なのだが、目覚めた時、心からホッしたような顔をしていたのだ。この人は優しい。
生理痛で苦しんでいる時は、薬局まで行って鎮痛剤を買ってきてくれたりする。
『店員が生理痛にはこれがいいって言うのよ』
今思うと、彼女は生理というものがどういうものなのか知らないというのに、あんなに心配してくれたのだ。胸がジンと痛くなる。いつも、親身になってくれていい人である。
(だけど、昔、男だった真実は、あたしには打ち明けてはくれないんだね……。それなら、あたしも何も知らないフリをするしかないよね)
そう思い、今まで通りに女子同士として接していこうと思っていると、その日の午後、徳光さんは、給湯室でみんなに言いふらしたのである。
『ねぇねぇ、聞いてよ。菜々ね、小塚君と付き合い始めたわよ』
そんなニュースに社内は一気にざわめいた。何しろ、小塚は田中の次に注目されている若手のイケメンである。
『なんで土屋さんなのよ』
『土屋さんの未亡人のテクニックにほだされたのかもしれないよ』
給湯室やトイレでコソコソと噂されて生きた心地はしなかった。菜々が付き合ったのは大河一人。夜のテクニックなどある訳がない。何にせよ、これで田中も諦めてくれるだろう。
そう想っていたのだが甘かった。翌日、菜々が帰ろうとビルのホールに向かったところで田中に捕まってしまった。話があると言うので、仕方なく田中と二人切りになれそうな場所へと向かう。まさか、社員食堂で薬を盛ったりはしないだろう。
「田中さん、何でしょう」
「妙な噂を聞いたよ。菜々ちゃんが小塚と付き合っているって女子が騒いでいたけど、本当なの?」
「本当ですよ。お互い、いい歳ですし結婚を前提として付き合っています。小塚さんに告白されて、とても嬉しかったです」
そう言うと、明らかに田中は顔色を変えた。そんな馬鹿なと言いたげな表情で呟いている。
「駄目だよ。あいつは菜々ちゃんに相応しくないよ。オレの方が菜々ちゃんを幸せに出来ると思うんだ。ハッキリ言うよ。オレは菜々ちゃんが好きなんだ」
「あたしのどこが好きなんですか?」
「菜々ちゃんは可愛いよ。こんな可愛い子は見た事がない。菜々ちゃんの可愛い顔を毎日見たいんだよ」