幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
もうひとつのシークレット
 座席の上で横になり、洋斗はすやすや寝息を立てていた。

 やはりだいぶはしゃいで疲れたようだ。

 入ったファミレスで、持ってきたおやつを少しだけ食べて、お茶を飲んだあとは、ぐずることなくすやすやしだして、沙也はほっとした。

 話をするのも、お店に対してという意味でも、眠っていてくれると安心できる。

「すみません、お子様がおられるのに」

 沙也の向かいでは、先ほどの黒スーツの男性……名刺を改めて見たところ、『目暮(めぐれ)』という名前のようだ。

 彼がコーヒーを前に、少しすまなさそうにしていた。

「いいえ。あまり長居はできないですけど……」

 このあと父が迎えに来てくれる予定なのだとか、だから帰りの足はあるのだとか、少しだけ状況を説明した。

 でも時間はないので、すぐ本題に入られた。

「不躾ですが、単刀直入にお聞きしますと、洋斗くんは……清登様のお子様ですね?」

 静かな硬い声で聞かれたことに、沙也はごくっと喉を鳴らしていた。

 こう聞かれるのではないかと、薄々予想していたから、ショックは少ない。

 でも清登と繋がりのある人物に言われてしまえば、どうしても構えてしまう。

「……どうしてそう思われるのですか?」

 沙也が返したのは、肯定でも否定でもなかった。

 探りを入れるような言い方になる。
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