幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
再会
 どきどき心臓を高鳴らせながら、沙也は待ち合わせ場所の駅前に立っていた。

 もうだいぶ暑くなりつつある、六月のある日。

 大切なひととの待ち合わせなのだ。

 今日は一人だった。

 洋斗は母に預けてきたのだ。

「ちょっと会いたいひとがいるから」

 言い訳だったけれどそう言った。

 友達に会うときなど、たまにその言葉で説明することがあったから、母もすんなり「いいわ」と受け入れてくれた。

 だから、普段着より少しかしこまった服装もしてきた。

 普段着は、洋斗のお世話に困らないようにカジュアルな服。

 カットソーに上着、下は緩めのパンツかスカート。

 靴だってスニーカーか、スリッポン。

 そんなものが多かった。

 でも今日は特別だから。

 大切な話をするから。

 水色の半袖ワンピースに、短め丈のカーディガン。

 靴も久しぶりに出してきた、少しヒールのあるパンプスだ。

 そこに小ぶりのバッグを手にして、待ち合わせ場所に立っている。

 心臓の鼓動はちっとも落ち着いてくれなかった。
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