幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
清登の決意
 かちり、と小さな音を立ててソーサーとティーカップが沙也の前に置かれた。

「ありがとうございます」

 沙也は給仕役の黒エプロンをかけたウェイターに、軽くお礼を言う。

「こういうところで良かったかな」

 清登の前には先に紅茶が出されていたから、ウェイターはすぐに会釈をして出ていった。

 彼が出て行ってすぐ、清登が切り出した。

「え、ううん、立派過ぎるくらいだよ」

 沙也は慌てて肯定以上のことを言ったし、実際、本当にそう思っている。

 ここはホテルを何階かエレベーターで上がったところにある、ティールーム。

 白い壁と大きな窓が上品で開放的な印象の、個室だ。

 窓からは初夏の植物が青々としている庭が見下ろせた。

 こんな状況ではなかったら、楽しく見入っただろうが、もちろんそんな場合ではない。

 テーブルセットが真ん中にセッティングされている、六畳ほどのこの部屋は、このティールームの中では狭いほうなのだろう。

 沙也にとってはやはり『立派過ぎ』て、小さく縮こまりそうなほどだったけれど。
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