幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
初めてのデート
 翌日、平日ど真ん中だったのだが、帰り支度を整えた沙也は会社を出てから仰天した。

 夕方、仕事が終わってから会おうと清登と約束していたのだけど、そこに停まっていたのは黒塗りの高級車だったのだから。

 清登は確かに御曹司なのだから、こういった車を持っていたり、乗っていたりしても、なんの不思議もない。でも、こうして目にした機会はあまりなくて実感がなかったのだ。

「お疲れ様、沙也」

 道路の端に寄せて停めたその車の前に立った清登は、にこりと笑った。カジュアル目だが、スーツに近い格好をしている。

「え、う、うん……ありがとう」

 意外な交通手段におろおろしてしまいながら返事をした沙也。

 仰天したのは、沙也だけでなく、「外まで一緒に行こうよ」と偶然一緒に来ていた明依も同じだったらしい。目を真ん丸にしている。

「あれ、沙也。お友達?」

 彼女に目を留めて、清登はやわらかな笑みで聞いてきた。沙也はあたふたと頷く。
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