幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

疾走

　制限速度ギリギリの猛スピードで走る車の中、沙也はそわそわしてたまらなかった。

　初めて乗るこの車は、国産車だ。

　でもその中では高級な部類に入る車種。

　その通り、ダークグレーの普通車であるこの車も、乗り心地はとてもいい。

　今はそれに感心したり、楽しんでいたりする場合ではないけれど。

「すみません、わたくしの私用車に若奥様をお乗せするなど」

　運転席でハンドルを握る目暮の声はすまなさそうだった。

　今日は沙也が初めて目にする、私服姿だった。

　開襟シャツにベストを合わせ、上に上着を羽織っている。

　下はシンプルなチノパンだ。

「とんでもないです！　私こそ、お休みの日にごめんなさい」

　それもそのはず、今日、目暮はオフの日だったのである。

　だというのに、沙也が『助けてほしい』と呼び出したのに応えて、急いでやってきてくれた。