幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
決別
「馬鹿なひとね! ひとを勝手に死なせないでちょうだい」

 崖から離れ、やっと自由の身になった真悠は、たっぷり呆れと、少々の怒りが混ざった声で沙也を怒鳴りつける。

 すべて理解し、また、少し落ち着けた沙也は、縮こまるしかない。

「す、すみません……あんな電話が来たもので、てっきり」

 沙也の釈明に、確かにその理由はあったかもしれない、と思ったようだ。

 真悠は腕を持ち上げて、あのときのように胸の前で組んだ。

 やはり、やれやれ、という様子だ。

「まぁ……そうね。誤解は招いたかもしれないわね。でもだからって、捕まえに来られるとは思わなかったわよ」

 それでも呆れ声はなくならなかった。

 それどころか、もっと強くなったように沙也は感じた。

「心配したんです」

 ぽつんと呟く。

 うつむいて、こぼすように言ったそれは、本心。

 沙也のそれに、真悠の勢いはちょっと落ちた。

「……そう。それはありがとう」

 数秒、黙ったけれど、そのあとお礼を言ってくれた。
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