幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
初めてのホテルディナー
「じゃあ、素敵な時間に……乾杯」

 清登が白く澄んだ美しい液体で満たされたグラスを手にし、軽く掲げる。

「うん。乾杯」

 沙也も同じグラスを持って、同じようにした。

 会社の飲み会などではグラスを合わせるけれど、こういう場ではそういうわけではないのだろうな、と思って、真似をして掲げるだけにしておく。

 グラスを鼻に近付けると、ふわりと豊かなぶどうの香りが鼻腔に入ってきた。

 白ワイン、沙也はあまり飲んだことがない。

 なのにひとくち口に含んだそれは、するりと喉を通っていって、まったく引っかからなかった。

 上質であるだけに、安いワインにありがちな、えぐみや渋みがまるで感じられない。

 これほど美味しいワイン、沙也は今まで飲んだことなどなく、感動を覚えてしまった。

「美味い。沙也は大丈夫?」

 自分もひとくち飲んだ清登は満足げ。

 顔をあげて、沙也に聞いてくれる。

 沙也がまだ成人して間もなく、あまりアルコールに慣れていないのは知られているのだ。

 でも大丈夫どころか、とても美味しくて飲みやすいと感じられたから、沙也は笑顔で頷いた。

「うん! こんな美味しいワイン、初めてだよ」
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