幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
美人な婚約者
「とっても美味しかった!」

 レストランを出て、エレベーターに乗って、沙也は満足を言葉に乗せて吐き出した。

 上品なレストランでは少々相応しくないかと思ったので、二人きりのエレベーターに乗ってからにしておいたのだ。

「ふふ、そのほうが沙也らしいや」

 清登は沙也のその言葉や様子がおかしかったようで、軽く笑った。

 沙也も笑みを返す。

 今は素の自分でいたいと思う。

 かしこまった場で、上品に過ごすのも、非日常を感じられて、楽しかった。

 でもやはり、清登といるときは、なにも取り繕わない『自分』でいたいと思うのだ。

「じゃあ、このあとは送っていくよ。もう待機してるはずだから、ちょっと電話をかけてくる」

 エレベーターを降りてから、清登は懐からスマホを取り出した。

 きっとホテル前まで車を回してくれるのだろう。

 沙也は、なにからなにまで甘えてしまうことに申し訳なくなってしまう。

 レストランでの食事代だって、当たり前のように払われてしまった。

 それについては「俺から交際をお願いしたんだから、当然だよ」と言われたので、甘えることにしてしまったのだけど。
< 48 / 358 >

この作品をシェア

pagetop