幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
恋人の一夜
「お風呂、お先にありがとう」

 まだほんのり湿っている髪を背中に流した沙也は、ちょっと緊張しながら部屋へ戻ってきた。

「ああ、おかえり」

 居室のソファに居た清登が顔を上げ、微笑を浮かべる。

 今夜泊まるのは、高級ホテルのスイートルーム。

 ベッドがある部屋のほかにも、この大きめの居室がついている造りだ。もちろん沙也はこんな部屋に泊まるのは初めてだった。

 居室自体がすでに十畳ほどありそうなほど広いのだ。シックなブラウンで内装は統一されて、あたたかみのある雰囲気だ。

 居室で待っていた清登はディナーのために着ていたスーツの上着を脱ぎ、スラックスとシャツだけのスタイルで、大きめのタブレット端末を触っていた。

 ソファに深く座り、なにか確認だか連絡だかをしていたようだ。

 きっと仕事のなにか。

 沙也はすぐ悟った。

 休みを取ったのは沙也ばかりではない。清登だって、現在、祖父の会社に勤めているのだから、同じである。

 それに一般社員の沙也とは、まるで立場が違う。すでに役職があると言っていたし、まだまだ若手ながら、いくらかの評価もされているのだとちらりと聞いたことがある。
< 68 / 358 >

この作品をシェア

pagetop