幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました
発覚
「おはよ! 今日は暑いよねぇ」

 出勤して、ロッカールームに入ろうとしたところで、うしろから、ぽんと肩を叩かれた。

 振り向くと、半袖カットソーにスカートという、夏らしい通勤スタイルの明依がにこにこしていた。髪もアップにしている。

 同じようなオフィスカジュアル姿の沙也も、「おはよう」と返したのだけど、明依は眉根を寄せる。

「沙也、具合悪い? 顔色が良くないよ」

 出勤するなり、一発で見抜かれて、沙也は気まずくなる。ロッカールームに入り、自分のロッカーを開けながら、濁った声で返事をした。

「うん……、ちょっと夏バテみたい。ここしばらくこうなの」

 正直に話したけれど、明依は心配そうな表情を崩さない。

「夏バテって、生理とぶつかると最悪なんだよね。私も重なると貧血っぽくなるし、そうだったりする?」

 そんなふうに言ってきて、きっとそれは何気ない気持ちで言われただろうけれど、沙也の意識は、一瞬、空白になった。

 貧血になる大きな原因であるのは、もちろん生理。

 確かに沙也は貧血を起こしやすい体質であるけれど、よく考えれば、その原因はしばらく見ていなかったのだ。

 思い当たってしまえば、気付いた。もう二ヵ月以上、生理がない。


 一ヵ月以上も来ないのは今までもあったけど、今回、最後に来たの、いつだっけ……。
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