忘れられない恋

プロポーズ






2020年6月7日。



超高層ビルにありながら自然の安らぎを思わせる非日常空間。


初めて来る高級レストランで私は口をポカンと開け、仁くんとイタリアンを楽しんでいた。



似合もしない高級レストラン、それも豪華なコース料理を相手にナイフとフォークをギコギコしている私は、心の準備に余念がない。



だって、今日は第一日曜日。


プロポーズの日じゃないか。


普段来たこともない高級レストランを選ぶだなんて、プロポーズ以外あり得ないでしょ。



それに高校時代、プロポーズもプロポーズの日だったりして、なんて言った記憶がある。



想いれのある日にプロポーズするなんて定番中の定番。


ソワソワとズボンのポッケの中を何回も確認するように、仁くんは手を出し入れしている。



きっと、あの中に婚約指輪が入っているのだな?


私が見逃すはずもない。



「あのさ……」



重たかった仁くんの口がとうとう開いた。



くる……プロポーズの言葉が。



付き合ったり、別れたりと色々あったけど、交際して4年余り。



やっと私はプロポーズを体感することになるんだと、ウキウキワクワクドキドキだった。



「渡したいもんがあるんだ」



来たぁーー、絶対に婚約指輪だ。
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