極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
Prologue
 「菜乃花……?」

 不安げな重低音が上から降ってきた。
 この声を、私は知っている。
 まさか、と思った。
 そんなことはありえない、と。
 顔を上げると、今まさに心の中で考えていたひとが私を覗き込んでいる。
 端正な顔を歪め、眉を顰めて。

「た、拓海さ……」
「菜乃花!」

 咄嗟に立ち上がったら、ガバッと抱きしめられた。
 その温もりに、懐かしさと切なさが同時に湧いてくる。
 どうしてこんなところにいるの?
 私、夢を見ているの?
 身体を少し離した拓海さんは、私をじっと見つめる。
 その瞳が切なげに揺れている。

「ずっと会いたかった」

 会いたかったなんて、嘘でも言わないで。
 だって心の蓋が開いてしまいそうになる。
 私もずっと会いたかったのだと、叫びたくなってしまう。

 もう一生、彼と会うことはないはずだったのにーー。

 
< 1 / 102 >

この作品をシェア

pagetop