極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
5.
 六月に入り、本格的に暑さが増してきた。
 もう少ししたら梅雨入りしてジメジメした天気が続くんだろう。
 そしたら公園にも行けなくなるな。
 拓斗の有り余る体力の発散場所がなくなってしまう。
 公園に行けなくなるということは拓海さんと会う機会も減ってしまうということだろうか。
 そんなことをぼんやりと考えていたとき。

「……なしさん、小鳥遊さん」
「え?」

 顔を上げると、師長が心配そうに私を覗き込んでいた。

「どうしたの?顔色悪いわよ」
「いえ、大丈夫です」
「そう?それならいいけど」
 
 師長に笑顔を返すと、彼女は微笑んで去って行った。
 けれど、なんだかいつもと違って身体が重い気がするな。
 はあっとため息を吐き、気持ちを仕事に切り替える。
 まずはバイタルとお熱を測りにいかなきゃ。
 大部屋に行くと、子どもたちが集まって本を読んでいた。
 上からこそっと覗いてみる。

「なに読んでるの?」
「あ、たかなしさん!」
「あのねえ、まちがいさがしの本でねえ」

 うんうん、とうなづきながらも、心の中では困惑していた。
 どうしたんだろう。
 子どもたちの声がうまく耳に入ってこない。
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