幼なじみの不器用な愛し方

幼なじみはやれば出来る子です。

「忙しくしてるところ余計なおせっかいで悪いんだけどさ、有斗、来月の入試平気なの?」


食器洗いを終え、我が家のリビングのソファーでくつろぐ有斗の背中に声をかける。

有斗は食後のリンゴをフォークに突き刺して、ちらりとこちらを見た。


「まぁ、あんま大丈夫じゃねーけど、大丈夫」


歯切れの悪い返答に、わたしは眉をハの字にする。

有斗の希望進路は、大学進学だ。

実家からでも通える都内の大学の、総合型選抜入試を受けるらしい。

卒業後は仕事一本で生きていくのかと聞いた時に、有斗は曖昧に笑ってそう教えてくれた。


「んな心配そうにしなくても、移動中とか空き時間見つけてやってるって。ああ見えて近藤さんすっげー賢いから、聞いたら教えてくれるし」


言い聞かせるように言葉を並べる有斗。

わたしが心配しているのはそういうことじゃないよ。

そう思っても、ぐっと言葉を飲み込む。


「それより、美月はどうなんだよ。指定校の枠、もう問題ないんだろ?」

「あぁ……うん。他に希望者もいなさそうだし、問題ないだろうって」

「そっか。よかった」
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