幼なじみの不器用な愛し方

幼なじみは今日も変わらず隣にいます。

まぁぶっちゃけ、こんなことは初めてじゃない。

スカウトされて芸能事務所に所属するまでも有斗は女の子に人気があったし、当たり前のように一緒にいるわたしがやっかみや敵意を向けられることは多々あった。

けれど、幸い周りには仲のいい友達がたくさんいたから気丈でいられたし、それを跳ね除けてまで向かってくるような気概のある人はいなかった。


だから、今回もすぐに収束するだろうと思ってたんだけど……。


[いい加減消えて。あんたがいたら、有斗くんの株が下がる]


二つ折りの紙を開かずにいようと思うのに、つい開いてしまうわたしはバカだと思う。

ぐしゃっと握り潰してしまいたくなるのを堪え、ある程度綺麗に折りたたんで鞄に突っ込んだ。


これで3回目だ。

辺りを見回してもいつも通り人が賑わうだけで、怪しい影は見当たらない。


「どうした? 美月」


声を掛けられてはっとすると、上靴に履き替えた有斗が不思議そうにわたしの顔を覗き込んでいた。

わたしは笑顔を繕って、頭を振る。


「ううん、何でもないの。教室行こ」


不思議そうにする有斗の背中をぐいぐいと押して、廊下を歩き出す。
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