幼なじみの不器用な愛し方

幼なじみはチーズケーキが好きです。

「あ、あの! 秋山先輩と有斗先輩って、本当にただの幼なじみなんですかっ!?」


2時間目と3時間目の間の移動教室の道中。

表情に緊張を滲ませた女の子2人に声を掛けられた。


「えっと……」


公衆の全面での出来事に、わたしはどう答えたものかと言い淀む。

その一瞬、周囲の意識が四方から向けられていることにも気付いてしまった。


この子達は誰なんだろう。

わたしを先輩って呼んだから、1年生か2年生だろうけど。

メモの差出人じゃないよね……?

そんなことを考えては、あんな悪意に心を揺さぶられていることを自覚して気が滅入る。


「……うん、そうだよ」


誰がどこで見ているかわからない。

下手な受け答えをするのが怖くて、わたしはかろうじて口元に笑みを貼り付けてその場を去った。




「なーんかむかつくぅ〜」


いよいよ晩秋に足を踏み入れた頃、手のひらの半分をセーターの袖に隠した結子が、サンドイッチを頬張りながら唇を尖らせる。

わたしは空き教室の窓の外にどんより広がる灰色の雲をぼんやり眺めながら、首を傾げた。
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