幼なじみの不器用な愛し方

幼なじみはこれからも。

3月1日。

今日は遂に、卒業式です。


「春からみーちゃんと離れ離れなんて寂しいよぉ〜〜〜!!!」


目に大粒の涙を浮かべ、今日何度目かの台詞を口にする結子を抱き留める。

胸元を飾るコサージュを潰してしまわないように、薄い肩をとんとん叩いて宥めた。


「いつだって会えるよ。遠くに行くわけじゃないんだからさ」


この台詞も、今日何度目だろう。

もう耳にタコ、というような顔を傍で浮かべているのはツジで、2人は無事に同じ大学に進学することが決まった。

バイトを頑張って、2年生になる頃には同棲を始めるのが目標なんだって。


「いいのか? 有斗、ずっと囲まれてるけど」


ツジが指差す方向では生徒が群がっていて、ここからは頭しか見えないけれど、その中心には有斗がいる。


「あはは。大変そう。こんな距離で有斗に会える機会も、もうないかもだもんねぇ」


集団の中には、下級生の姿も、男子生徒の姿もある。

つい先日も、ゴールデンタイムの人気バラエティに出演し、お茶の間を騒がせたとか何とか(結子談)。
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