幼なじみの不器用な愛し方

幼なじみは覚悟を決めたらしいです。

「教室で待ってる。片付け終わったら連絡して」


幼なじみにそんなことを言われたのは、体育祭の後、終礼が終わってすぐのことだ。

体操服のまま、グラウンドの撤収作業に向かおうとしていると有斗に呼び止められた。


振り返るといつになく真剣な目でわたしを見下ろす有斗がいて、何とか頷くので精一杯だった。




「あれ、美月ちゃん帰らないの?」


グラウンドの撤収作業が終わり、みんなが昇降口に向かっていく中でひとり階段に向かったところ、メグちゃんに声をかけられた。

どきりとして、ぎこちなく振り返る。


「えっと……教室に忘れ物しちゃって。回収したらすぐ帰るよ」

「そっか。じゃあ先に帰るね。おつかれさま!」

「おつかれさま。またね」


メグちゃんと真由美ちゃんに手を振って別れる。

と、2人のすぐ後ろには菊池と谷瀬くんがいた。


「2人も帰るの?」

「まさか。今から部活だよ」


菊池と言葉を交わしていると、谷瀬くんと視線が絡んだ。

借り物競走を思い出してドキッとしたわたしに、谷瀬くんが笑いかける。
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