【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
不思議な通訳と王城へ
タラップは若干急ではあったものの、スロープ状に滑り止めのような段差があり、歩きやすい造りになっていた。
私はソフィアを抱っこしながら、反対の手はヴィルに引かれ、慎重にタラップを下りていく。
降りきったところでレジェク殿下が目の前に来て、私達に恭しく挨拶をしてくれた。
「我が国へようこそおいでくださいました。 王太子殿下、そしてオリビア様。 お久しぶりです……無事のご到着に皆、喜んでおります」
「出迎えまでしていただき、感謝いたします。建国祭まで数日間ですが、世話になります」
ヴィルとレジェク殿下が握手をしながら挨拶を交わす姿を見て、なにやら不穏な空気が見えるのは気のせいではないかもしれない。
ソフィアが私の服をほんの少しきゅっと握ってきたので、彼女の顔を見てウィンクをする。
知らない大人ばかりで緊張するわよね。
彼女の気持ちを和らげる為にしたのだけれど、ソフィアは私の顔が面白かったのか肩を揺らしながら笑っていた。
ああ、可愛い。
こういう改まった場だから我慢しなければと思いつつ、抱っこして連れて歩きながらドルレアン国の民にソフィアの可愛さを振りまきたい衝動に駆られたのを必死で堪えた。
でもここに居並ぶ方々と挨拶をしなければならないので、渋々彼女をおろし、手を繋ぐ事にとどめた自分を褒めたい。
私がそんな葛藤をしていると、レジェク殿下が私の前へやってきて挨拶をしてきたのだった。
「オリビア様、建国祭ではご無礼を働き、大変申し訳ございません。その後、御手の痕は消えましたか?」
「はい、もうすっかり」
私はニッコリ笑って殿下の目の前に手をかざして見せた……あんなものがずっと残っていてたまるものですか。
我が国での建国祭で強く掴まれた時に出来た手の痕。
思い出したくもないのにいちいち話題にあげてくるなんて。
それに”治った”ではなく”消えた”って言葉を使ってくるところがレジェク殿下らしいわね……相変わらず粘着質な感じがして背筋が粟立つ。
私が笑顔のまま固まっている様子を面白がっているのか、ソフィアと手を繋いでいない方の腕をスルリと持ち上げられ、手首にキスをしてきた。