◇Clown Act◇
◇♣︎◇
(弱虫ピエロside)
あぁ、ついに一人になってしまった。
橋本兄妹も、若松先輩も、先に行ってしまった。
まずい。どうすればいいか分からない。
嫌な汗が背中にぐっしょりと滲む。
唯一この場に残っているフィムくんが、心配そうに僕を見た。
「日下部くん、とにかく逃げて。ピエロたちはただ追いかけてくるだけじゃない。捕まったら最後、ひどく拷問されて殺される」
「え、ええっ?!」
「だから逃げるんだ、ジョーカーくんの言っていたように、どこか遠くへ。このゲームは今までの何倍も死を覚悟して挑むしかない」
そんなの聞いてない。
ずっと思っていたけど、司会の人いつも説明が足りないよね?
殺しにくること確定なら言ってくれたっていいじゃないか。
「も、もう10分経っちゃう…どうしよう」
時計を見ながらあわあわと足が震える。
もし現在地が3、4階、もしくは別棟だったら僕だって心に余裕を持てる。
でも残念ながら状況が違う。
ここは1階の多目的室。
廊下を出た渡り廊下を挟めばすぐ体育館だ。
そういえば若松先輩、体育館側に走っていったけどなんのつもりなんだろう?
あの人が自ら命を捨てにいくとは思わないけど。
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
ピンチなのはこの僕だ。
こわい、こわい
あぁ橋本さんは無事かなぁ?
本当は一緒に行動したかったけど、強烈なお兄さんがそばにいちゃ僕なんかの出る幕はないし…