冷酷弁護士と契約結婚
契約結婚解消
2週間はあっという間にすぎ、今日は涼介と
2人で病院へ行く日だ。


支度が終わり玄関へ行くと、涼介はもう靴を履いて待っている。近寄った鈴音を真っすぐ見つめ、彼女の顔を優しく両手で包み込んだ。

「なぁ、俺たちの契約結婚をもう解消しないか? そして......」


言いかけたとき涼介のケータイが鳴り、外へ出た。とっさの出来事に鈴音の体は一瞬硬直し、頭の中が真っ白になる。繰り返し【解消】という言葉が耳に響き続けた。


(あぁ、遂にこの時が来てしまった。涼介さんの電話を立ち聞きした日から、このことを考えない様にしていたのに。ただ一緒にいられればいいと思っていたのに。涼介さんにとって、これたただの契約だったんだ。やはり私は愛されていなかったんだ。勘違いしていた自分が悪いよね)


電話を終えた涼介がドアを開けた。


「すまない、大至急事務所へ行かなければならなくなった。抜糸が終わったら連絡しなさい。あっ、帰ってきたらさっきの話の続きをしよう」


早口に伝え、ドアを閉めた。残された鈴音はしばらく立ちすくみ、鉛のように重く感じる身体を引きずるようにして病院へ向かう。




「はい、これで抜糸は終わったよ。痛くなかったでしょう? 傷跡は薄く残ってしまうな」


申し訳なさそうに彰人がいった。


「お世話になりました。ありがとうございます」


浮かぬ顔で礼を言い立ち上がる。診察室に入ってきた時から鈴音の様子に違和感があった彰人は、彼女をランチへ誘う。


「ねぇ、鈴音ちゃん、丁度お昼だし一緒にランチ行こうよ。僕のおすすめの店教えてあげる」


半ば強引に鈴音を連れ出し、彰人が案内したのは裏通りの商店街にある喫茶店Bon。
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