冷酷弁護士と契約結婚
本物夫婦
玄関を開けると涼介の靴がある、もうすでに帰ってきている。実は彰人からメッセージを受け取り、急いで戻ったのだ。


(どうしよう、やっぱり涼介さんに今会いたくない)


玄関に立ちつくしていると、部屋の中から走ってくる音が聞こえる。


「やっと戻ってきた!」


涼介は鈴音を強く抱きしめた。


「なぜ連絡しなかった? 心配したんだぞ‼」

「......して、どうして心配なんかするの?」

涙をこらえ震える声で鈴音が言い放つ。


「当り前じゃないか!」

「どうせもう離婚するのに、どうして心配なんかす......」


突然抱きしめられていた腕が解かれ、無言でリビングに連れていかれ、ソファーに座らせられた。


隣に座った涼介は、俯いている鈴音の顎を指で上げる。


「おい、誰と誰が離婚するんだ?」


怒りを含んだ涼介の冷たい目と声に委縮した鈴音は、何も言うことができす恐怖に震えた。


ハッとした涼介は優しく彼女の髪を撫でる。


「ごめん、怖がらせるつもりはないんだ......、お前は俺と離婚したいのか?」

鈴音は大きく首を横に振った。


「じゃあ、なんで離婚なんて言うんだ?」

「りょ、涼介さんが言ったんじゃない、契約解消って。それに前にも電話でいってたでしょう、 女避けとか結婚なんてしたくなかったって」


鈴音の溢れる涙を涼介は指で拭う。


「今朝言ったことが全てではない。電話で話が中断してしまったから。いいか、よく聞けよ。契約結婚を解消して、そして俺と本物の夫婦になってくれ」


鈴音を抱き寄せ、膝の上に座らせた。


「前にお前が聞いた電話の事も、きっと途中までしか聞いていないんだと思う。確かに俺たちはお互いの利害の為に結婚した。でもな、一緒に暮らすうちにいつもお前の笑顔に癒されていたんだよ」


涼介は愛おしく鈴音を見つめる。
































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