神に選ばれなかった者達 前編
負けて悔しい花一匁Ⅲ

響也side

―――――――…今夜もまた、夜がやって来た。




「…ここは…」

気がつくと、俺は真っ白な廊下の真ん中に立っていた。

…ここは、いつもの…学校の教室じゃないな。

明らかに、昨日までの夢の中とは違う場所にいた。

…そうか…。

俺の中に、二つの相反する感情が生まれた。
 
まず一つは、昨日まで必死に戦っていたゾンビ軍団との死闘が、ようやく終わったのだという喜び。

もう二度と、あのゾンビに食い殺される心配はない。

ようやく助かった。

『処刑場』で、佐乱李優が「ようやくゾンビとの戦いが終わった」みたいなことを言って、他の皆も終わったような気になっていたが。

俺は正直、完全に安心した訳じゃなかった。

昨日焼き殺したのはゾンビ軍団の第1軍で。

この後は第2軍が待ち構えている…という可能性も、なくはないだろう?

それを恐れていたのだ。

だが…俺達の戦場は、こうして様相を変えている。

本当に…ゾンビとの戦いは、終わったんだな。

ホッと一安心…したような気分だったが。

それに反して、良いようのない苦痛も同時に感じていた。

だって、舞台が変わったってことは。

俺達の戦いはまだ終わってない。

今度は、また別のバケモノと戦わされるってことだ。

…酷い話だ。

一つバケモノを倒したら…また次のバケモノと戦わされる。

その戦いに終わりはなく、生贄は減ることなく増えていくだけ…。

これから先、どんなに頑張ってバケモノ達を殺し続けても…。

奴らは雨後の竹の子のように現れ、俺達は終わりなく、永遠に戦い続けなければならない。

こんな悲劇があるだろうか。

どんな本でも映画でも、それは終わりがあるから名作となり得るのだ。

終わりがないなら…それは、惰性のように続く、ただの事象に過ぎない。

そして俺達登場人物にとっては、悲劇以外の何物でもないのである。
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