蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜

前を向いて歩きたい

彼は早速引っ越しの手続きを済ませ、私は毎日荷物の整理や家具の処分をした。
明日からがフライトから戻ってきたら連休で引っ越す予定だ。
先週実家に行き、彼との結婚の話をすると両親はとても驚いていた。まさか私がこんなに早く結婚するとは思っていなかったところショックを受けたようだ。でも相手が瑛人さんだとわかるとその時の比ではないくらいの驚きようだった。

「まさか桐生くんと?」

「うん」

「本当なのか?」

整備士の父は彼のことをよく知っており、真面目な人柄も仕事への真摯な向き合いも評価していた。けれど花形と言えるパイロットとの結婚に不安を感じているのは明らかだった。母も同じように思っているのを感じた。

「悠里、パイロットと結婚するなんてお母さんは心配。大丈夫なの?」

「あぁ、確かに良い彼は真面目だが、それでもやっぱりパイロットだ。モテるだろう。その……」

「うん。モテると思う。でも、それ以上に彼は私のことを思ってくれているから信頼できるの」

父は驚いたような表情を浮かべたままだったが、頷きそれ以上は何も言わなかった。

瑛人さんが訪れた当日、2人とも、ううん、彼もとても緊張していた。

「ご無沙汰しております」

「あぁ、久しぶりだな。桐生くんの活躍はいつも耳にしてるよ」

「ありがとうございます。パイロットになりたての頃、鷺宮さんには本当にお世話になりました」

え?と彼を振り返ると頷いていた。面識があった程度ではなかったのかもしれない。口出しできずにいると、

「いやいや、とても真面目な子が入ってきたなと嬉しく思っていたよ。でもいつの間にか立派になってしまって、私の方が君に声をかけるのが申し訳なくて」

父の彼に対する親密さにも驚かされてしまう。

「あの頃疑問に思ったことを丁寧に教えていただき、それに現場の声も聞かせてもらって勉強になりました。ドックに行きたいと思うのですが忙しくてご無沙汰してしまい申し訳ありません」

「いやいや、君の活躍をみんな嬉しく思っているんだ。だからたまにでいいから顔を出してくれないか? みんなも喜ぶよ」

「はい」
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