蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜

君を守り続ける

「おはようございます」

入籍後初出勤となるが何も変わらない。まだ事務所には届けも出しておらず、知っているのは結城さんと未来ちゃんだけ。でも薬指には彼と同じマリッジリングがはまっていた。

「おはようございます」

間もなくブリーフィングの時間のため人が集まり始めていた。リングを見られるのが恥ずかしく、自然と右手を上に重ねてしまった。
先日の事故について不安に感じる人も多く対応に注意するよう説明があった。
瑛人さんは事故機についての状況報告などまだやることが多く乗務から数日外れることになったようだ。乗務できないことは辛いが、それでも原因究明に必ず必要なことだから、と協力的だった。

お昼休みになり、今日は未来ちゃんと一緒に食堂に行こうとするが、珍しくデッキで食べないかと誘われた。ベーグルサンドとコーヒーを買うとデッキに上がり端のベンチに腰掛けると、早速私の左手を取られた。

「おめでとうございます! さっきからずっと話したかったんですよ」

「ありがとう」

「キラキラですね。これで桐生さんも他の人からちょっかいかけられなくなりますね」

「う……ん。そうかな」

そういうと未来ちゃんは身を乗り出し私の指輪を指さしてきた。

「何言ってるんですか。桐生さんが機内で最大限にのろけたんですよ。もう周囲は手を出そうなんて思うはずないです!!!」

え?
私は未来ちゃんがなんの話をしているのかわからず訝しげにしていると、

「もー、これです。見てください」

彼女のスマホからは昨日の機内の様子がアップされていた。周囲のざわめきに緊張感が伝わってくる。CAさんが周り歩き、安心するよう説明しているが、それでも車輪が出ないなんて、と不安の声があちこちから聞こえてきていた。そんな時に機内アナウンスが入った。その声は瑛人さんのもののように聞こえる。機長に変わりアナウンスをしているのだろうか。

「わたくしごとですが本日この飛行機を降りた後、明日入籍をする予定です。幾度となくすれ違い、ようやく彼女が結婚に前向きになってくれました。私は彼女を必ず幸せにすると誓いました。地上で待つ彼女と明日必ず結婚したいと思っております。皆様もご家族のもとに必ずお送りいたします」

これって……。
何が流れたのかわかった瞬間顔が熱くなり、胸が締め付けられた。

「愛されてますね」

私は素直にこくりと頷くと溢れた涙を拭った。
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